「緊急在庫処分SOS!」で注目「月寒あんぱん」 注文殺到の一方で直営店閉店の事情

   札幌商工会議所が公式サイト内に開設している掲示板「緊急在庫処分SOS!」。新型コロナウイルスの影響で在庫を抱えた北海道の食品業界を支援する目的で、通常価格より得な商品の情報などを掲載している。

   そのひとつ、札幌銘菓「月寒(つきさむ)あんぱん」は20個入りで通常価格3024円のところ、1999円(いずれも税込み)で販売、注目されている。

月寒あんぱん
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「こんなに注文をいただいたことは...」

   月寒あんぱんは1906(明治39)年創業の老舗メーカー・ほんま(本社:札幌市)が製造する菓子。「あんぱん」という名前だが形は平たく、色も茶色い。生地の中にはあんこがギッシリ詰められ、「月餅」に近い印象だ。北海道内では小売店などで販売し、道民の「ソウルフード」として親しまれている。

   しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、出品予定だった百貨店の北海道物産展が相次いで中止に。そこで、出荷できなくなった月寒あんぱんを20年3月16日から店頭や同社の公式オンラインショップで販売することになった。これに先立ち3月13日、「緊急在庫処分SOS!」にセール情報を掲載。札幌商工会議所の公式ツイッターでも商品が紹介され、3月18日16時までに2400超のリツイート数を記録した。この数字は他の商品と比べても際立って多く、ツイッター上では「月寒あんぱんポチってしまった」「届くの楽しみ」との投稿が相次いだ。

   20年3月17日、J-CASTトレンドの電話取材に応じたほんまの本間幹英社長は、

「これまでこんなに注文をいただいたことはありませんでした。このようなペースだと、ひょっとしたら早いうちに(在庫が)無くなってしまうかもしれません」

と、驚きを隠せない様子。商品は発送まで1週間待ちの状態で、社内総出で発送作業に追われていると話す。

「これだけ客足が落ちれば...」

   北海道では新型コロナウイルスの感染拡大を受け、20年2月28日から3月19日まで緊急事態宣言を発令中だ。多くの北海道民が外出を自粛する中、地域経済への影響が懸念されている。

   本間社長に事業への影響を聞くと、「販路によっては(売り上げが)落ちているところもある」。今月末には、2010年から運営してきた販売店「月寒あんぱん本舗ほんま大通店」を閉める決断をした。札幌市中心部唯一の販売店で、地元客が贈答品として月寒あんぱんを注文する場所でもあった。

   閉店の主な理由は「契約期間の終了」。だが、

「緊急事態宣言が出てから、お客様が来なくなりました。こうした状況では、贈答品としてのお菓子は(在庫が)動かない。これだけ客足が落ちれば、(仮に契約期間が終了していなくても)店舗の営業を続けるのは難しいと思います」

と語る。

   それでも本間社長は、消費者への感謝の思いを口にする。

「(セールを通じて)お客様に買い支えていただき、『ありがたい』という一言に尽きます。それはうちだけじゃなく、(緊急在庫処分SOSに商品を掲載して)商品を買っていただいている北海道のメーカーはみんなそう思っているのではないでしょうか」

(J-CASTニュース編集部 佐藤庄之介)

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