緊急事態宣言解除後の横浜 新人記者が見つめ続けたラーメン店の1週間

   新型コロナウイルスの感染拡大のため、首都圏をはじめ7都府県で緊急事態宣言が発令されたのは2020年4月7日。今年4月に入社したばかりの新社会人の中には、勤務先になじむ前に在宅勤務となり、戸惑った人も多いだろう。記者もその一人だ。

   期間中、休業要請が出された飲食店を中心に、厳しい経営を強いられた事業者もいる。記者は、宣言が全国的に解除された翌日の5月26日から6月1日までの7日間、神奈川県横浜市にある飲食店1軒を継続取材した。

1週間取材を続けた「ザ・ラーメン屋」
平日の店内。ランチタイムでも客は少ない(2020年5月27日)。
テラス席の様子。天気がよければ埋まるときもある(2020年5月27日)。
休日の店内。客入りは激減してしまっている(2020年5月31日)。
休日の山下公園。人は増えたが、平時と比べるとかなり少ない(2020年5月31日)。
Read more...

平日の客足「コロナ前の3分の1」

「まだ緊急事態宣言下と状況はあまり変わりません」

   調査初日の5月26日、横浜市中区にある個人経営のラーメン店「ザ・ラーメン屋」店主の千原和政さんはこう話した。ランチタイムに訪ねると、4人掛け×6席(内席4、テラス席2)の店内に客は少なく、テラス席の片方に2人組がいるばかりだった。

「宣言解除からまだ1日ということもあってか、宣言後に激減した客足はそのままです。以前は昼のピークタイムともなればほぼ常に満席状態でしたが、今は一度満席になるかどうかというところです」

   以後、記者は毎日正午から13時に同店へ取材に赴いた。

   翌27日。気温26度で好天に恵まれ、店舗近くにある山下公園には前日よりも多少人が増えていた。店内にも内席に3人組の家族連れが1組、テラス席は両方とも埋まっているなど、客足は前日よりもわずかに増えていた。

   この日取材に応じてくれたのは、和政さんの妻で女将の叡子さん。「今日は暑いから、ビール目当てで来るお客さんのおかげで客足は若干増えました」と喜びつつも、「それでも激減していることに変わりはありません。ピークタイムに1度満席になるといっても、せいぜい各席2人づつくらい。前は相席もお願いしてしっかり全席が埋まった状態でした」と、現状の厳しさを嘆いた。

   続く28日、29日も状況は変わらず。千原さんの話によると、取材期間中も日によってはピークタイム自体が全くない日があったという。

「平日の客足としては、コロナ前の3分の1くらいにまで落ち込んでいます」

   店から徒歩数分の距離には、大型客船が数多く停泊する横浜港大さん橋国際客船ターミナルがある。以前は、港から入ってきた外国人の客が大勢いた。

「ゴールデンウィークもある4月・5月は、本来なら客船シーズンの真っただ中。毎年1000人単位の観光客が大さん橋から流れてくるので、平日だろうと店にも外国人客や客船乗組員が大勢来ました。今年はコロナのせいでそれらの客層もまったく見込めないので、ダメージは大きいです」

期待の土日も「休日の売り上げとしては7割ほど減少」

   宣言解除後初の土日となる5月30日と31日は、山下公園を訪れる人は前日から倍ほどに増えていた。店舗前の通りにも通行人が増え、街には多少活気が戻ってきた印象だった。しかし、それでも店は「およそ休日の人入りとは思えない」とさえない様子。

「コロナ前の休日はいつも16時ごろまで営業としていましたが、それでも15時ごろには麺が売り切れていました。それがこの2日(5月30、31日)では売れ残ってしまっています。時短営業で閉店時間も14時ごろに早めていますし、休日の売り上げとしては7割ほど減少しています」

   「土日になれば少しは客足も戻ってくるのでは」と期待していた千原さん夫妻だったが、残念な結果になってしまったようだ。

   取材最終日の6月1日。この日、各地で会社員が出社し学校が再開するなか、「ザ・ラーメン屋」の利用客は少ないままだった。千原さんは「ランチタイムには久々に背広姿のお客さんも見え、以前の顔ぶれが戻ってきた」としつつ、「人数は戻ってきていません」。

   宣言解除後の1週間を振り返って千原さんは、不安を口にした。

「依然としてお客さんが少ない状態が続いています。これから徐々に増えてくれればいいですが、外出自粛が続き自宅での食事が増えたことで『外食離れ』をする人も増えているのではないかと心配です。現状から平時の状態に戻るのはなかなか難しいと思います」

(J-CASTトレンド編集部 福田週人)

注目情報

PR
追悼