人気の河鍋暁斎、その実力がわかるユニークな展覧会 「下絵」ばかりですみません!

   まだ伊藤若冲(1716~1800)ほど有名ではないが、「ポスト・若冲」をうかがう一番手として期待されている――江戸後期から明治初期にかけて活躍した河鍋暁斎(1831~1889)は、そんな画家だ。

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生の筆づかいがわかる

   大胆な構図。グロテスクな描写・・・最近ではあちこちで大規模な回顧展が開かれている。そんな中で、2020年11月28日から東京駅の東京ステーションギャラリーで始まる「河鍋暁斎の底力」展はちょっと様相が異なる。本人の「本画」ではなく、「下絵」を集めた展覧会なのだ。

   「本画」とは、下絵に彩色を施した完成品。ところが今回の「底力」展で並んでいるのは素描、画稿、さらには宴席など即興で描かれた席画、絵手本など。いわば、生の筆づかいが感じられる作品ばかり。その理由を主催者は以下のように説明している。

「本画は完成度が高い一方で、筆勢が抑制された、いわばお行儀のいい作品と言え、彩色などには時に弟子の手が入ることもありました。また、暁斎には多くの版画作品がありますが、これらは暁斎の原画を、彫師と摺師、すなわち他人の協力を得て完成させたものです。これに対して下絵や画稿類は100%暁斎の手になり、その卓越した筆力をまざまざと感じることができます。本展は、あえて本画を展示せず、暁斎の描写と表現の力量のみを、存分に味わっていただこう、というチャレンジングな試みなのです」
「暁斎の下絵や画稿は、本画にはない独自の魅力に満ちています。暁斎は一度その対象を把握してしまえば、実物を前にしなくとも、あらゆる方向から見た、どんなポーズの姿でも描くことができたのです。画稿類には、この能力がいかんなく発揮され、数々の驚くべき群像表現を見ることができます。そして画面を埋め尽くすように描き込まれた無数の線描の迫力・筆の勢いも、見どころのひとつです。衣服の襞や髪の毛、顔や身体の皺など、本画では整理されてしまう細部が、画稿では執拗に描かれます。それがかえって、本画では薄められてしまった迫力とダイナミックな動きを表現しており、尽きせぬ魅力となっているのです」

「GIGA・MANGA」展にも登場

   暁斎作品を多数所蔵する河鍋暁斎記念美術館(埼玉県蕨市)によると、暁斎は、現在の茨城県古河市に藩士・河鍋記右衛門の次男として生まれ、亡くなるまで、江戸・東京で活躍した。浮世絵、狩野派双方の素地を持つ「絵師」で、注文とあれば来るもの拒まず、残酷画や風刺画など、あらゆるジャンルを描き尽した。伝統的な土佐・住吉派、円山四条派、琳派、文人画、中国画、西洋人体図など、学べるもの全てから学んでいたという。

   暁斎については、11月25日から始まった「GIGA・MANGA 江戸戯画から近代漫画へ」展(東京都墨田区・すみだ北斎美術館、21年1月24日まで)でも、北斎、国芳らとともに漫画のルーツとしても大きく取り上げられ、ことわざを戯画化したシリーズ|河鍋暁斎「狂斎百図」が展示されている。

   美術史家・山下裕二さんの『日本美術の底力――「縄文×弥生」で解き明かす 』(NHK出版新書)によると、2000年に京都国立博物館で開催された特別展「没後200年 若冲」をきっかけに若冲人気が定着。新たに曾我蕭白、長沢芦雪、鈴木其一、河鍋暁斎など、それまで一般にはあまり知られていなかった絵師たちも注目されるようになり、単独展もさかんに開かれるようになったという。

   「河鍋暁斎の底力」展は21年2月7日まで。入館チケットはローソンチケット(Lコード34337)で販売。詳細は公式サイトで。

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