東京都の貯金額「1年で99%減」報道の衝撃 新型コロナの休業支援金もピンチ

   東京都の貯金にあたる財政調整基金(財調)の残高が、2021年度末時点で21億円になる――。日本経済新聞(電子版)が21年5月31日、こう報じた。

   21年4月の都の発表によると、20年度末時点での財調の残高は2511億円を見込んでおり、報道のとおり21億円となると約99%減だ。財調の激減で何が起こるか、専門家に聞いた。

都の財政調整基金が枯渇したら一大事
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19年度末は9345億円あった

   財調は、自治体が財源不足に備えて積み立て、財源が足りなくなった時に活用される基金だ。都の発表によると、19年度末での都の財調の残高は9345億円とされていた。

   都は21年5月7日に緊急事態措置の延長により、感染拡大防止協力金の支給などを目的に、一般会計3708億円の補正予算を編成。財源として財調から726億円を組み込んだ。

   また5月28日にも、緊急事態措置の延長に伴い、協力金支給などを目的として一般会計2673億円の補正予算を編成。こちらでも財源の一部に財調からの123億円を充てるなど、これまで新型コロナウイルスの影響で何度か財調が使われてきた。なお、5月21日の会見の時点では、小池百合子都知事は令和3(2021)年度末の残高が223億円になると話していた。

21億円は「数十万人ほどの市町の水準」

   関西学院大学経済学部の上村敏之(財政学)教授はJ-CASTトレンドの取材に対し、都の財調残高が21億円になるとの報道について「通常こういうことはない」と話す。都は全地方自治体の中で最も多い額の財調をこれまで有しており、財政的に余裕があった。21億円という数字について、「数十万人ほどの市町の財調残高が、この水準の金額です」と驚いた様子で語る。

   財調が困窮した自治体では、公共サービスのうち、国との共同でなく独自に行う「単独事業」で歳出の削減が行われる場合があるという。どの単独事業を削減の対象とするかは自治体によって異なるが、子ども向けの医療費の助成制度など、福祉サービスが減っていく事例も。

   今後、休業要請に応じた飲食店などへの協力金・支援金への影響が出る可能性については、「あると思います」。さらに「(今後協力金や支援金の給付を)やろうと思ったら、何かの事業を見直さないといけない」と上村教授。公共事業による建設の延期などを行うことで歳出を削減し、財源を捻出する必要があるのではないかと推測した。

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