帝人は「ラブレターツイート」届ける 大企業だから「DAKE JA NAI」親しみやすさ

【ツイッターは仕事!企業公式「中の人」集合(15)】

   「DAKE JA NAI定時」。「DAKE JA NAI テイジン」は、アカウント名をもじってツイッターに「定時」を知らせる挨拶が特徴的な、帝人(東京都千代田区)の公式ツイッターだ。「DAKE JA NAI(ダケジャナイ)」とは帝人が大事にしている価値観を指し、「無限の可能性を信じ挑戦する」「多様性を認める」意味がある。

   大手企業かつ「帝人」という強そうな社名で、なかなか近寄りがたい雰囲気...かと思いきや、実態は「平和第一」が合言葉のフレンドリーアカウントだった。

「DAKE JA NAI テイジン」公式ツイッター担当者
さまざまな可能性を応援するキーワードである「DAKE JA NAI」
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営業と広報経験から培った能力を駆使

DAKE JA NAI テイジン】帝人が扱うさまざまな商品やイベント情報を発信。朝夕の挨拶ツイートに力を入れており、特に20~30代の認知度向上を目的として運用している。アカウント開設は2016年8月、現担当者は19年11月から運用中。

   担当者は普段、広告出稿やCM制作といった宣伝、会社案内や社内報作成といったブランディングにまつわる仕事を行っている。営業や広報などの業務を経て、現在の部署に異動する際にツイッターを前任者から引き継いだ。

   初めは定期的に商品紹介ツイートをするのみだったが、20年4月から「自分で投稿内容を考えて、つぶやくようになった」。以来「まじめそう」「堅そう」という印象を良い意味で裏切りつつ、親しみやすさを感じてもらえるよう「程よい自虐感のある、身の回りの小さな話」を心がけている。何をおいても「誰も傷つけない」ことが前提だ。

   例えば、在宅勤務中は「洗濯機の隣で仕事をしている」「実は1メートル以内に玄関もある」と、変わった場所で仕事をしていることを明かす...という具合だ。営業社員だった頃に磨いた「下から目線」、すなわち「お辞儀マインド」が生きているという。

   ただ、一見楽しそうな内容であろうと「10人中9人が喜んでも、1人が不快になる可能性がある」と感じたら、投稿しない。危機察知能力や、「発信してはならないこと」がツイートに紛れないよう、隙を無くして守備力を高める力は、「広報部時代に培ったもの」。さまざまなメディアの記者とやりとりをする中で得た、「明かして良い情報か否か」を的確に線引きして対応する能力が生きているというのだ。

「夜、感情の赴くまま情熱的に書き上げたラブレターを、翌朝に冷静な頭で読むと『何というものを生み出してしまったのか』と後悔する...なんて話がありますよね。ツイートもそれに似ています。何かあれば自分で責任を取るのだという覚悟を常に持ちつつ、時流も見極めながら『いつ読んでも大丈夫だと自信を持てるラブレター』を作るつもりで臨んでいます」

初めて話しかけてくれた人に返す「特別なリプライ」

   アカウント担当者になって感じるのは「BtoBの企業ほど、ツイッターを運用した方がよい」ということ。「わかる人にわかればよい、と考えるのはもったいない。消費者と直接繋がる機会が少ないからこそ、『こんなところにも帝人が貢献しているんだ』と、1人でも多くの人に知ってもらう努力が大切だと感じます」。

   しかし、投稿の全てを「自社にまつわること」に絞る必要はないのだという。話しかけてくる人をシャットアウトせず、挨拶や雑談を通じて信頼関係を築き、親しまれることが「会社自体に関心を寄せてもらう」第一歩だと捉えているためだ。

   J-CASTトレンド記者が、帝人アカウントに初めて挨拶をしたときに驚いたことがある。手紙の宛名のように、わざわざ「J-CASTトレンドさん」と記し、J-CASTトレンドが用いる定型あいさつ文を使って、テンションを合わせるように返事をくれたのだ。リプライ欄を眺めると、他にも何件か同じように宛名を書き添えてリプライしているとわかり、他のアカウントでは見かけない珍しい光景だと感じた。


初めて挨拶したとき、アカウント名が記されたリプライを受け取ったことでより親しみが増した。今ではもっとフランクなやりとりになっている

   担当者は「意識してやっていたことではありません。勇気を出して初めて話しかけてくれた人に感謝し、より仲良くなれるように...という思いの表れだと思います」と話した。何度かやりとりをした面識のある相手にリプライするときは、「かえってよそよそしく思われる可能性を踏まえてか、自然と宛名をつけなくなっているようです」。

「毎日たくさん話しかけてもらって大変ありがたく、嬉しいですが、もし同じ投稿を個人アカウントで行ったら、これほどの反響は間違いなく得られないとも自覚しています。『自分の成果だ、手柄だ』と偉ぶりすぎず、会社の看板を背負わせてもらっていることに感謝し、努力を続けていきたいです」

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