池袋に西川口「B級中華料理」を食べまくる 中国人も驚くブログの正体

   【連載】浦上早苗の「試験に出ない中国事情」

   西川口、池袋、高田馬場など首都圏にあるB級中華の店を紹介するブログ「東京で中華を食らう」。自ら足を運んで確認した新店情報が次々と公開され、中国人もチェックする人気ブログになっている。

   ブログ主の阿生(アーション)さんに、食べ歩きの熱意の源やお勧めの店を聞いた。

阿生さんの提供写真(サラリーマンのため、これがぎりぎりとのこと)
中国のSNSで新店情報をキャッチしたら、行かずにはいられないという。
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新しい店、行かずにはいられない

「池袋に新たな中華フードコート『食府書苑』オープン」

   2021年6月6日の開店当日に訪問し、レポートした阿生さんのツイッターの投稿は2358RT(7月6日午前時点)され、この情報にそそられて同店を訪れた人たちが、次々にSNSに投稿する連鎖が起きている。

   「新しい店が開店したと知ったら、行かずにはいられない」と話すブログ主の阿生さんの正体は、東京のIT企業に勤める26歳の会社員だ。

   高校で中国語の勉強を始め、大学1年生の時に台湾を訪れたことで、さらに勉強に熱が入った。早稲田大学3年時に上海・復旦大学に交換留学したが、留学前に国際的な中国語検定「HSK」の最高レベルである6級に合格したツワモノでもある。

   2018年に留学から戻ると、高田馬場の中華レストラン巡りに精を出し、2019年に就職してからも、3か月に1度のペースで中国に旅行した。

   しかし、そんな中国三昧の生活はコロナ禍で一変した。昨年4月の緊急事態宣言で多くの店が休業し、さらに会社がテレワークに入ったことで時間を持て余した阿生さんは、過去の写真の整理を始めた。そして、情報の有効活用と暇つぶしを兼ねて、ブログ「東京で中華を食らう」を開設したという。

店の集客に寄与、値引きされることも


御徒町、池袋に出店する「楊国福」の麻辣燙(マーラータン)。辛さは調節できるので、辛い物が苦手な人もOK(阿生さん提供)

   阿生さんは普段、平日はテレワーク&自炊で自宅にこもり、週末に1日3軒のペースで店をはしごし、発信する。

   冒頭で紹介したように、阿生さんのブログやツイッターでは新店情報が頻繁に紹介される。阿生さんによると、中国版インスタグラムと呼ばれる「小紅書(RED)」で情報収集しているそうだが、ブログ更新のスピード感は、中国人も「すごく早い」と驚くほどで、阿生さんの投稿が中国のSNS「微博(ウェイボ)」に逆輸出され、バズることもある。

   その地道な取り組みは、多くのB級グルメ好きを引きつけるようになり、2021年に入るとツイッターのフォロワーが急増。ブログで紹介した店を再訪した際には、老板(ラオバン:中国語で店主の意味)から「日本人の来客が増えた」と感謝されたり、値引きしてもらうことも増えたという。

一押しの店は「実家飯よりソウルフード」

   最近はテレビのバラエティー番組からも出演依頼が舞い込むなど、「中華の人」として人気上昇中の阿生さんだが、店の老板から、ビジネスの話を持ちかけられやすくなったという悩みもある。

「ブログに載せていいかと聞いたら、『趣味でやるのはもったいない、収益化するべきだ』『一緒にTikTokをやろう』など助言され、2時間足止めされたこともあります。さすが中国の経営者はたくましい」

   ちなみに、東京中の中華を食べつくそうとしている阿生さんの一押しのお店は、御徒町や池袋に店舗がある麻辣燙(マーラータン)専門店「楊国福」。中毒性のある辛さで、上海留学時代は週に3回通っていた。「親には悪いけど、実家のごはんよりソウルフード」だそうだ。

浦上早苗
経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。「中国」は大きすぎて、何をどう切り取っても「一面しか書いてない」と言われますが、そもそも一人で全俯瞰できる代物ではないのは重々承知の上で、中国と接点のある人たちが「ああ、分かる」と共感できるような「一面」「一片」を集めるよう心がけています。
Twitter:https://twitter.com/sanadi37

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