新型コロナ「飲み薬」そろってきた リスク「9割減」の新薬、価格が課題

   新型コロナウイルス対策で「ゲームチェンジャー」が出現した。米ファイザー社の飲み薬「パクスロビド」だ。死亡や入院のリスクが9割も減少するという。長引くコロナ対策で「切り札」になるのではないかと期待を集めている。先行する米メルク社の「モルヌピラビル」も英国で承認を受けたばかり。コロナの飲み薬を巡る動き気が活気づいている。

新型コロナウイルスに有効な飲み薬の登場が待たれる(写真はイメージ)
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発症後3日以内の患者に投与

   日経新聞によると、米製薬大手ファイザーは2021年11月5日、開発中の新型コロナウイルス向け飲み薬「パクスロビド」のデータを公表した。発症後3日以内の患者に投与したところ、投与していないグループに比べて入院・死亡リスクが89%も減ったという。早ければ年内に米国で投与が始まる可能性があるそうだ。

   ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は「パンデミックを食い止めるための取り組みにおいてゲームチェンジャーとなる」と語っている。

   コロナの飲み薬では、米メルク社の「モルヌピラビル」がやや先行している。こちらは、発症後5日以内に投与した場合、入院・死亡リスクを約50%減らせるという。11月4日に英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)から承認を得ている。

1回約8万円か

   コロナの治療薬で気になるのは値段だ。日経新聞によると、米政府側はファイザーの「パクスロビド」1回の治療分につき約700ドル(約8万円)の支払いを見込んでいるという。メルク社の「モルヌピラビル」も、各種報道によると、1回当たり約700ドルと言われている。

   ロイターによると、米国はすでに「モルヌピラビル」170万回分を確保。23年1月までにさらに350回分の供給を受ける契約を結んでいる。オーストラリア、韓国、タイ、台湾、シンガポール、マレーシアの各政府もメルクと供給契約を交わしたか契約交渉中で、欧州連合(EU)も欧州医薬品庁の承認後の購入を検討中だ。

   共同通信は、「英、コロナ飲み薬を世界初承認 日本でも年内の実用化目指す」と、日本でも承認・購入・使用の動きが加速するとの見通しを示している。

飲み薬でも「格差」の懸念

   新型コロナワクチンでは、先進国と途上国の間で「ワクチン格差」が起きた。今も問題になっている。ワクチンは一回2000円程度だが、飲み薬は一回約8万円と高い。さらに格差が広がるのではないかと心配する声も出ている。

   ロイターはすでに10月19日、「メルクのコロナ飲み薬で格差再燃、低中所得国は確保困難も」という記事で懸念の声をまとめている。

   コロナ飲み薬を巡っては韓国内でも議論が起きている。韓国情報を伝えるWoW!Koreaは9月11日、「飲み薬タイプの新型コロナ治療薬が1人あたり8万円超え...『高くても先購入すべき』vs『理解できない』」という記事で、韓国内の複雑な反応を報じている。

   日経新聞によると、国内の製薬会社も飲み薬を開発している。塩野義製薬は9月末から最終段階の治験を始めた。感染初期の患者に投与して重症化を抑制するほか、発熱やせきなどの症状改善を狙う。安全性や有効性を検証した上で2021年中の承認申請を目指しており、22年3月までに国内で100万人分を生産する計画だ。

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