新型コロナ「日本は感染激減」の不思議 過去のパンデミックでも突如収束の例

   新型コロナウイルスの感染が日本では急減した。海外メディアも注目し、日本でも新聞や雑誌、テレビなどで「第5波収束」の分析が続いている。さまざまな理由が挙げられているが、現在のところ「決め手」はないようだ。いずれまた第6波が来るので、警戒を怠るべきではない、と警告する専門家が多い。

「対面ではマスク」の生活が当たり前になった
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成功例として参考に

「瀬戸際からの復活 日本が新型コロナの驚くべき成功例になった理由」(英ガーディアン紙、10月13日)

   これは、海外メディアの典型的な報道の一例だ。欧米ではいっこうに新規感染者数が減らない国が多いため、日本の現況を成功例として参考にしようとしている。日本人が以前からマスク着用に慣れていることなどが強調されている。

   日本のメディアでも、急減の理由を探る報道が活発だ。

「コロナ感染者 急速減少の理由 専門家の見解は...」(NHK、10月6日)
「感染者"激減"の理由 ウイルス研究者と感染症専門医の見解 マスクない生活はいつ戻る?」(FNNプライムオンライン、11月12日)
「ここにきて、コロナウイルスは『日本では消滅した』と言える『これだけの理由』(週刊現代、11月10日)
「『第5波』なぜ消えた 仮説色々...ワクチン以外に有力候補は?」(朝日新聞、11月20日)

「複合効果」説

   NHKによると、政府分科会の尾身茂会長は9月28日、以下のような理由を挙げている。

▽連休やお盆休みなど、感染拡大につながる要素が集中する時期が過ぎ、拡大の要素がなくなった。
▽医療が危機的な状態となったことが広く伝わって、危機感が共有された。
▽感染が広がりやすい夜間の繁華街の人出が減少した。
▽ワクチンの接種が進み、高齢者だけでなく若い世代でも感染が減少した。
▽気温や雨など、天候の影響があった。

   各メディアの報道によると、今のところ考えられている理由は大別して二つある。

   一つは、ウイルス本体から見て外的な要因によるもの。ワクチンの効果があった、緊急事態宣言や医療危機で人々の行動が抑制され、警戒感も高まり人流が減った、マスクの100%近い着用......。社会的・人為的な防御策が奏功した、というものだ。急減は、それらの「複合効果」によるとされることが多い。

   日本はワクチン接種がやや遅れたが、夏の感染拡大期に接種が進んだ。ワクチンは接種後、しばらくの間は効果が高い。したがって、感染拡大期にちょうど抵抗力が強い人が増えた、との見方も指摘されている。

ウイルスが自滅?

   ただし、新規感染者が急減したのは、日本だけではない。インド、インドネシア、バングラデシュ、中南米などもピーク時と比べると大幅に減った。「週刊現代」によると、ケニアでも感染者数が激減している。国民のワクチン接種率が約3%であることを踏まえると、ワクチンの効果である可能性は極めて低い、と同誌は指摘する。

   そこで、このところ注目されている理由が、もう一つある。デルタ株に内在する特性によるものではないか、という見方だ。一種の「内部原因」説だ。

   朝日新聞によると、国内で広がったデルタ株はほぼ「AY.29」というタイプだ。海外ではほとんど検出されていない。アルファ株などよりも遺伝情報のエラーが多く、その結果として、ウイルスが自滅したのではないか、という趣旨の専門家の見方が紹介されている。ただし、まだ「サイエンスとしては弱い」とされ、専門家の間でも否定的な見方があるという。

   週刊現代によると、スペイン風邪など過去の大規模な感染症のパンデミックでも何度か「波」があった。増減を繰り返した後、突如、収束に向かっている。新型コロナでも、日本では過去5回の「波」を経験している。今回は、その間にワクチン接種が進んで重症化率は低下、飲み薬も開発された。

   新型コロナウイルス本体については、依然として未解明の部分があるが、社会的・人為的な対応は進み、治療や医療体制などの経験値も高まっているのが現状だ。欧米の感染状況からすると、おそらく「第6波」は来るだろうが、その時は「第5波」ほどひどくならないだろうと予想する専門家が多い。

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