コロナ「第7波」感染者数は過去最大 重症化抑えているが懸念材料はある

   新型コロナウイルス「第7波」の急拡大が続いている。オミクロン株の新種「BA.5」によるものだ。今後さらに猛スピードで広がるとの見方が強まっている。

   感染力がこれまで以上に強い、感染経路が追えない、ワクチン3回でも感染する、などこれまでの感染拡大とはやや異なる不安要素も多い。中でも最大の不安は「行動規制なしで第7波を乗り切れるのか」――。政府の方針も揺らぎ始めている。

ワクチンの威力で、感染しても重症化が抑えられているという
Read more...

感染経路が追えない

   今年1~2月のオミクロン株による「第6波」も感染拡大が急だった。しかし、今回の「第7波」はそれを上回る勢いだ。1日当たりの全国の感染者数は急増、あっというまに10万人を突破し、過去最高となった。これは「BA.5」が従来のオミクロン株よりも感染力が強いためだ。

   7月19日には、全国で新たに6万6745人の感染が確認された。前週の火曜日より9253人減少したが、これは前日までが3連休で検査数が減っていたことが大きい。

   「第7波」の特徴として、特に深刻なのは、感染経路を追えない感染者が多いことだ。産経新聞によると、東京都の場合、新規感染者に占める感染経路不明者の割合(7月5日~11日)は、80代以上を除いて全ての年代で50%を超え、20代では80%にもなっている。行動が活発な若い世代の感染者の多くは、どこかわからないところで、いつの間にか感染している格好だ。

   さらに大きな不安材料は、「BA.5」が、ワクチンを突破する力が強い可能性があることだ。東京都の調査では、感染者の約6割がワクチンを2回接種している。つまり、もはや「2回接種」では効果が薄い。接種から時間がたってワクチン効果が低下していることも大きい。

   全体の約2割はワクチン未接種で、約2割は不明。その中には、ワクチン3回接種者も含まれていると見られる。河野太郎・前ワクチン担当相も、ワクチン3回接種にもかかわらず感染している。ネットには、ワクチン3回接種でも感染したという報告がいくつも出ている。

病床使用率が上昇中

   一方では、「第6波」よりも軽微な要素も多い。今のところ、重症者数や死者数は大きく下回っている。これは、重症化しやすいとされる高齢者層に3回目のワクチン接種が進んでいること、ワクチンの威力で、感染しても重症化が抑えられていることが大きいとされている。

   その結果、病床使用率がまだ低水準にとどまり、先週段階では、医療体制も全国的にはひっ迫していない。そのことが「今のところ、行動規制は考えていない」という政府判断の根拠となっていた。

   しかし、1週間ごとに公表される全国の病床使用率は、確実に上昇している。NHKによると、7月6日段階は15%にとどまっていたが、13日は25%に上がった。人口10万人あたりの感染者数が全国1位の沖縄県ではすでに57%。同2位の島根県が37%、同3位の熊本県は53%に達し、いずれも全国平均を大きく上回っている。これらの感染急拡大県のデータは、全国の先行指標ともいえる。

   15日の沖縄タイムスによると、沖縄県内の医療提供体制はすでに危機的な状況だという。「コロナ病床と一般病床の双方が逼迫(ひっぱく)し、医療スタッフの欠勤が追い打ちをかける。一部の病院では『医療崩壊』が現実味を帯び始めた」と報じている。石垣市の県立八重山病院では、看護師の欠勤が20~25%にも上るという。

   ほかにも滋賀県(24→43%)、和歌山県(19→48%)など、病床使用率がこの1週間で急増している県は少なくない。

   すでにすでに重症者はじわじわ増え始めている。6月~7月上旬は二ケタ台だったが、7月14日に100人になり、19日は155人。

厚労相が「行動制限」示唆

   今後の見通しについて、爆発的な拡大を予想する声も増えている。

   東京都のモニタリング会議では7月14日、このままの勢いが続けば月末には1日の感染者数が5万3000人になるという衝撃の試算が公表された。

   田村憲久前厚生労働相は、17日のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演し、新型コロナウイルスの新規感染者について、8月上旬には、全国で1日に「40万人近くということもありえる」という見方を示した。

   感染者数が急増すれば、中等症や重症者が増えて病床使用率もアップし、死者が増えることが想定される。

   京都新聞は16日に配信した社説で、「首相は『今は感染症対策と経済社会活動の両立が大事だ』として、まん延防止等重点措置適用など行動制限は求めない方針に固執する。当然、打つ手は限られ、手詰まり感が強い」「第6波では適切な医療を受けられずに自宅や施設での容体悪化が相次いだ。手をこまねいていれば、再び後手批判を浴びかねない」と指摘していた。

   後藤茂之厚労相は17日のNHK「日曜討論」で、さらなる感染拡大や医療逼迫(ひっぱく)が起きれば、「行動規制も含めた対策の強化も考えていかなければならない」と従来よりも一歩踏み込んだ。朝日新聞は、「岸田文雄首相は15日、『新たな行動制限は現時点では考えていない』と述べていたが、可能性があることを示唆した形だ」と解説している。

注目情報

PR
追悼