食事制限で健康!どころか下痢に 低カロリーでも食べ方次第でヤバくなる

【連載】お腹トラブル天国と地獄 ~運命の選択~

   40代の女性・香織さんは、IT系の中堅企業に勤務。アラフォーになってから、年々体型の維持の難しさに悩んでいます。仕事はデスクワークが中心で、1日中ほぼ座った状態。業務中に体を動かしてカロリー消費できないため、食事制限をして自己管理することにしました。

   ところがある日、帰宅前にいきなり腹痛と下痢に襲われてしまいます。自己管理は完璧だったはずなのに、どうして――。

自己管理は完璧だったはずなのに…
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「ダイエットもうまくいきそう」と思ったら

   香織さんの場合ランチは、コンビニで買うことがほとんど。「何を選ぶか」が、自己管理の上で大きな分かれ道です。

   タンパク質の量を増やすために、サラダチキンを食べる。食事のたびに、脂肪の吸収を抑制する効果が認められているトクホ(特定保健用食品)飲料の茶を必ず飲むようにする。このように、SNSのダイエット情報を頼りにランチを購入していました。

   これまでは、デスクの引き出しの中にたくさんのお菓子をストックしていた香織さん。手元にあると、つい手を伸ばしてしまうので、全て同僚にあげてお菓子断ちをします。代わりに、ガムのボトルをデスクに常備しました。勤務中はガムをかみながら、口寂しさと空腹を紛らわせることに成功します。「これなら、ダイエットもうまくいきそう」。

   ある日、帰宅しようと席を立つと、腹痛が! 急いでトイレに行くと、下痢をしています。体調が悪かったわけではなく、傷んだ食べ物を口にした覚えもありません。腹痛も排便の後、収まりました。

   香織さんは考えます。自分の生活で最近の変化は、食事くらいです。「ガムを食べながら仕事するのをやめる」と「トクホ飲料は1日1本にする」。どちらを変えれば、腹痛や下痢を防ぐことができるでしょうか。

腸内の浸透圧が変化

   香織さんの腹痛と下痢は、食べ物によって腸内の浸透圧が変化して起こった一時的なものと考えられます。つまり、下痢や腹痛を防ぐには、食べるものを変えればよいのです。

   私たちの腸内は、食事の栄養素によって腸内の浸透圧が高くなることがあります。すると、腸内の水分と電解質のバランスが崩れて、下痢が引き起こされてしまうのです。便秘のときに酸化マグネシウムなどの塩類下剤を使うと、腸内の浸透圧が高くなり排便を促せる仕組みと同じです。

   今回、香織さんが口にしていたもので腸内の浸透圧を変化させるのは、ガムに含まれる甘味料。つまり、正解は「ガムを食べながら仕事するのをやめる」。

   ガムに含まれている甘味料の多くは、キシリトール、ソルビトール、マルチトールなどの「糖アルコール」。小腸で消化・吸収されにくいため、低カロリーでダイエットには適した甘味料と言われています。しかし、消化・吸収されずに大量に大腸まで運ばれると、大腸内の浸透圧を高める原因に。結果、腹痛や下痢を引き起こします。

   糖アルコールも適量を食べる分には、何の問題もありません。問題は、食べすぎ。ガムで主に使用されるキシリトールの1日の摂取量は、目安が10グラム程度とされています。香織さんは、仕事中ずっとガムをかんでいたので、この摂取量を過剰に超えてしまったのではないかと考えられます。

   人によっては摂取量が目安以下でも、下痢や腹痛を起こす場合があるので、自分の適量を見極めて食べるようにしましょう。

低カロリー食品も適量を

   ガムをかむと、満腹中枢を刺激して食欲を減らし、咀嚼(そしゃく)によって胃腸の働きを活性化します。2013年、電子情報通信学会技術研究報告に掲載された揖斐拓人氏らの論文では、ガムをかむことが脳を活性させて集中力を高めてくれると報告されています。しかし、だからと言ってガムばかりを食べるのはNG。適量を見極めましょう。

   ガム以外にもチョコレートなど、糖アルコールが使われているおやつがあります。同様に、食べ過ぎには注意してくださいね。

(文・イラスト:長瀬みなみ)

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