映画「鬼滅の刃」公開3日で11億円超 完全新作でなくても大ヒットする理由

   アニメ映画「『鬼滅の刃』上弦集結、そして刀鍛冶の里へ」が2023年2月3日の公開から3日で、興行収入11億円を突破した。「鬼滅の刃」公式ツイッターが6日に発表した。

   人気アニメだが、今回の映画は新作ではない。テレビアニメ「遊郭編」のクライマックス2話と、4月から放送の「刀鍛冶の里編」第1話がまとめられた「総集編」映画だ。ファンなら既に見たはずの内容が多くを占めるのに、それでも魅了されるのはなぜか。

「『鬼滅の刃』上弦集結、そして刀鍛冶の里へ」公式サイトより
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「洋画超大作級のスクリーン数」

   J-CASTトレンドは、映画ライターのよしひろまさみち氏に取材した。

   まず、総集編は観客動員が悪くなく、1スクリーンあたりの興行収入が比較的高い。そのため、「さまざまなヒットアニメが再編集の総集編を作るケースがあります」と話した。

   その中でも「『鬼滅の刃』上弦集結、そして刀鍛冶の里へ」の興収は、「だいたい他の総集編アニメと比べ4~5倍くらいでしょうか」と突出した成績を記録しているという。

   理由として、スクリーン数の多さを挙げた。他のアニメ総集編が100前後なのに対して、「鬼滅」は洋画超大作級の400スクリーン超になっているという。

「シネコン(シネマコンプレックス=複数の映画を同時上映できる複合型映画館)内のスクリーンが鬼滅で埋まる、もしくは1日中上映している、という環境ができます」

   よしひろ氏は、こう話す。実際、鬼滅に力を入れるシネコンでは上映回数が多くなっているという。集客機会は増え、順調に客足が伸びれば当然、収益増につながる。

「行ってみよう」という気にさせる

   もうひとつ。今回の「鬼滅の刃」映画では「入場特典目当ての観客が多く見受けられた」とも、よしひろ氏は指摘する。例えば、封切日が節分に当たる日だったことを記念した「上映記念 節分ビジュアルカード」と、「鬼」に焦点を当てた特別冊子「上弦集結本」を全国200万人限定で配布している。これを目当てに鑑賞した人が、初動3日間の好成績に影響したのだろうと推察した。

   前述したとおり、映画は総集編で、すでにテレビで放送したエピソードと、2か月後には見られる話をまとめた作品だ。「公開3日で興収11億円超」の人気を集めた理由について、よしひろ氏は「ファンの焦燥感を煽るのが本当に上手なタイトルが鬼滅」と分析する。

   2022年に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件を受けて、銃を使うキャラクターや、壺の鬼が登場する「刀鍛冶の里編」が中止するとのデマが流れた。よしひろ氏はこの騒ぎに触れ、「新作を待ち焦がれるファンが多いのは周知の通り」とする。そのうえで、「総集編であると分かっていても、(配布数を限定した)おまけがついていたら、知っているエピソードでもとりあえず行ってみよう、という気にさせるでしょう」と話した。

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