「ちはやふる」かるた監修声優が生読み上げ 「和のナレーション」のコツとは

【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招いて、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?

   第16回のゲストは、声優で、競技かるたA級公認読手(どくしゅ)の木本景子さん。テーマは「『ちはやふる』かるた監修声優が生読み上げ 『何でも和っぽくなる』コツ教えます」だ。スペースアーカイブはこちらから。

声優で、競技かるたA級公認読手(どくしゅ)の木本景子さん
(2022年に完結を迎えた)「ちはやふる」(c)末次由紀/講談社
朗読イベント「犯人は二人」に出演(前列右が木本さん)
木本さんが「和のナレーション」を生披露
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ふすまを開けた先で見たモノ

   「読手」とは、かるたにおいて「読み札を読む役」。木本さんは高校時代、友人に誘われてかるた部に入った。活動を見学に行き、ふすまを開けた先で見た「ジャージを着た部員が、運動部さながらの声掛けをしながら、勢いよく札をなぎ払っている」姿が、元々抱いていた「かるたは、おしとやかで雅」なイメージを、良い意味で跳ね飛ばしたという。以降、選手・読手両面で研鑽を積み、高校3年生でA級公認読手となった。

   そうしたルーツから、声優として、かるたにまつわる作品や番組に関わる機会が多い。映画「ちはやふるー結びー」には、読手・かるた監修として携わった。現在はナレーションの仕事がメインで、「かるたを読むようにお願いします」とオーダーされるケースもある。

   そこで木本さんに、「木本さん このフレーズに 和の響き 宿らせ読むと どうなりますか」と題し、「和のナレーション」を生披露してもらった(27:57~)。

山下さん「どうやったら、言葉をかるたっぽく読めるんですか?」
木本さん「私の場合、余韻を残すように『間に伸ばし』を入れてみたり、声のトーンも、普段しゃべるのとは違う、ちょっと低めを意識したりしていますね」

   また木本さんは、日本語の文章は基本的に「音が、上から下に流れていく」が、かるたを読む際には「1音目を低く、2音目を高く読む」決まりがあると話した。音の高低に気を付けると、それらしく聞こえるようだ。

   まず、山下さんから出題。自主制作に出てくる歌詞だ。混み合っている電車内では、物理法則や関節の動きを無視した独特なポージング「ジョジョ立ち」のような格好に、意図せずなってしまう、というもの。

「満員電車 人多すぎて ジョジョ立ちになってるじゃあねぇーかッ」

   木本さん曰く、和歌や、かるたには「っ(促音)」で終わるものがない。どのように表現するのか(30:23~)。

   リスナーからは、「ブロッコリーのマリネでチャンピオンを決めるトーナメント戦」といったユニークなフレーズや、山下さんへのエール「山下がんばれ がんばれがんばれ がんばれ山下 山下がんばれ」、「木本さんの自己紹介を、かるた風に」など、多様なリクエストが寄せられた。木本さんによる実演と、工夫したポイントの解説は、スペースにて。

日本語の素晴らしさ、声で届ける

   最後に、作リエ恒例の質問「仕事をする上で最も大事にしている、クリエイティブの柱」について。

木本さん「『日本語を大切にする』です。声優・ナレーターの仕事も、かるたも、日本語の豊かさを音で伝えられるのが魅力。特有の響き、美しさってあるじゃないですか」
山下さん「他の言語って、割とストレートですし、直接的ですよね」

   一つの事象に対して多様な言い回しがあり、微妙なニュアンスを伝えられる。言葉から色や温度、同じ情景を感じられるのが、日本語の魅力だと木本さんは語る。

   スペース終了後、山下さんは「和のナレーション生披露」コーナーを、『かるたっぽくしゃべる』という特技だけで映像を1本作れそうなくらい、楽しかった」と振り返った。「かるた風に自己紹介」は、今後も木本さんに使ってほしいナイスアイデア、と絶賛。木本さんも「かるたで自己紹介、バリエーションを増やしていこうと思う」と意気込んだ。

   さらに木本さんは、改めて「積み重ねていくこと」「好きなことや興味を持ったこと」を大切にしようと思えたという。「人生において無駄なことは何もないと思っている人間なので、その時々の新鮮な気持ちも大切にしていきたい」そうだ。

   声優とかるた、「言葉を使う共通点がある」二つの軸を持つ木本さん。かるたは試合が一時間半にもおよび、大会となると6~7試合も勝ち抜かなければならないため、部活動で走り込み、体幹トレーニング、腹筋、縄跳びに励み、体力・筋力をつけた。読手として、大勢の前でかるたを読む経験を通じ、度胸もつけた。培った全てが、今の仕事につながっている。

   第17回作リエは、2023年3月15日実施予定。

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