秋葉原の居酒屋「あがいてみたい」 閉店回避のため「前払い飲み会制」に挑戦

   新型コロナウイルス禍の影響による客足の減少を背景に、経営難で閉店する飲食店の話をたびたび耳にする。東京・秋葉原にある海鮮系居酒屋「八四六」は閉店を回避するため、「前払い飲み会制」を立ち上げた。

   あらかじめ2万円の支払いを受け付け、翌月の店舗利用時に利用客が前払いした額から支払いをする仕組みだ。

海鮮系居酒屋の生き残り策 (写真は「八四六」ツイッターの23年4月6日の投稿から)
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「無茶なお願い」承知で

   「八四六」は、2023年5月23日に店舗ツイッターを更新。「閉店予定でしたが、足掻いて(あがいて)みたいと思います」と投稿した。

   ツイートの続きによれば、同店は2014年8月に開店。近ごろはコロナ禍の影響により、営業が苦しくなった。いちどは23年5月末での閉店を決断し、ツイッターで告知すると、惜しむ声が多く寄せられた。

   店主の斎道良一氏自身、店を継続したい思いは強い。そこで、「前払い飲み会制」を新設するとし、「無茶なお願いですが」としつつ協力を呼びかけた。

   2万円の前払いを、銀行振り込みや店頭で受け付ける。前金分を使っての飲食は、支払った本人やその同伴者が利用可能。前払い制の利用者が20人いれば、今後も店を継続できるとの説明だ。

   あくまで前払い制で、募金を呼びかけるものでない。「前払い」の残額は、翌月に繰り越して利用可能だ。最終的に閉店した場合は残金を返金するという。

   入居する物件との賃貸契約は2024年6月まで。残りの約1年を営業できれば「悔いはありません!」としている。

「お店を利用して納得できるお客様」に向け

   「八四六」店主の斎道良一氏に取材した。「お店をやめないでほしい」と言われ、客と話し合いながら前金制を考案したという。5月24日時点で、前払いについて常連客を中心に約12人から連絡が寄せられているとのことだ。

   前金制の目的は、まずは「資金面」の確保。そして最大のねらいは、前払いを通して利用者への来店を促すことだ。「コロナ禍で居酒屋の客足はめっきり減ってしまいました。この活性化を促さないことには、お店の継続はどうにもなりません」(斎道氏)

   支援を呼びかけたツイートは、100件以上リツイートされている。だが前払い金のうち、閉店時に残金を確実に返してもらえるか心配する人もいるのではないか。斎道氏に直接聞くと、もともと今回のツイートは過去に店を利用したことのある客に向けて発信していると説明する。

   想定以上のツイートの拡散に「ありがたい」としつつ、「基本は『お店を利用して納得できるお客様』向けであることをご理解いただけますとありがたいです」と語った。

   なお前払いしていない人でも、通常の会計手段で店舗を利用できる。

   前述の通り、あと1年間の営業継続が現状の目的だ。24年に入居先と契約更新するかは「これからのお店の状況にかかっています」とのこと。

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