「口裂け女」今もお化け屋敷の主役 昭和から続く人気を専門家はこう見る

   口裂け女。昭和の世に現れ、子どもたちを震え上がらせた都市伝説。その後平成を経て令和の今も、人気は衰えていないようだ。

   お化け屋敷「口裂け女~切り裂きの闇~」が、2023年7月10日~20日の平日限定で、大阪天保山マーケットプレース2F「ひらめきスタジオ SPARK」で開催された。誕生から40年以上、今もお化け屋敷の「主役」になる口裂け女の魅力を、専門家に分析してもらった。

期間限定お化け屋敷「口裂け女~切り裂きの闇~」イメージ写真
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児童書、テレビ、映画で次々と

   このお化け屋敷を企画した伯虎座によると、「口裂け女」は普通の幽霊とは違い、「もしかしたら街中に実際に居るかもしれない」との、言葉では言い表せない恐怖心があるという。「日本でしか体感できないお化け屋敷を提供できる」と、今回企画した。

   入場者はアイマスクをする。視界が遮られた状態で体感することもあり、身体がビクッとなったり、悲鳴を上げる人がたくさんいたとのことだ。ホラーファン、家族連れ、年配の夫婦といった幅広い年代層が来場したという。

   口裂け女の登場は、1978~9年とされる。口元を完全に隠すほどのマスクをした女性が、学校帰りの子どもに「私、きれい?」とたずねる。「きれい」と答えると、「これでも?」と言いながらマスクを外す。口は耳元まで大きく裂けている......。

   その他の特徴は諸説あるが、都市伝説として広まりセンセーションを巻き起こした。以降、2023年の現在に至るまで、しばしばメディアに登場してきた。

   1990年11月8日に児童書「学校の怪談」(講談社)で、口裂け女が登場。94年にはNHKスペシャル「妖怪が見えますか」で取り上げられた。翌95年、映画「学校の怪談」で口裂け女が登場し、講談社からコミック「口裂け女伝説 1」が発売した。同コミックは97年、続編が刊行されている。

   2000年には、テレビアニメ「学校の怪談」の第3話「あたし、きれい? 口裂け女」がフジテレビで放送される予定だった。ところが、「口唇口蓋裂症」の障害を持つ子の保護者が同局に抗議。放送は見送られた。その後少し期間が空き、05年7月22日に怪談話の大家・一龍斎貞水さんの語りによる、全5話のホラーオムニバス「口裂け女」のDVDが発売された。

   2007年3月17日には、映画「口裂け女」が公開された。08年に続編が、さらに11年「ひきこさん VS 口裂け女」、16年「口裂け女 VS カシマさん」と「口裂け女VS」シリーズが続々と映画化。22年には、口裂け女をモチーフにした少女漫画「口が裂けても君には」が発売されている。

作者不在の「著作権フリー」

   テレビ番組や映画、コミックと、口裂け女は各時代で途切れなく現れてきた。その「人気」の背景について、妖怪文化研究家の河野隼也氏に取材した。

   考えられる理由として、口裂け女は「都市伝説」で創作物ではなく、作者が不在、出所が不明のため「著作権フリー」である点を指摘した。そのため、誰かに許可を得たり使用料を支払ったりせず、自由に映像作品などに使用できるというのだ。また現代に登場させても違和感がなく、「使いやすい」とも話した。

   それでも、令和の世にフィットするのか――。この点、河野氏は2020年以降の新型コロナウイルスの流行を挙げた。近年、誰もが常にマスクをしているのが見慣れた光景となった。口裂け女もまた、マスクをしている。

   マスク姿の一般人の中に口裂け女が紛れ込んでいても、分からないのではないか。

   そう思わせるような雰囲気が、「コロナ後」の今、増しているのかもしれない。

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