ラジオ体操はメタバースで 4年間休みなし、朝から数十人集まる「部活」

   眠い目をこすり、「ラジオ体操」の会場へ。しかし靴を履いて外出する代わりに、自室でVRゴーグルを頭にセット。ここは小学校の校庭や公園ではなく、仮想空間だ。

   メタバースプラットフォーム「VRChat」には、毎朝集まってラジオ体操をする「Questラジオ体操部」がある。

約17人が集まってラジオ体操していた
最後はスタンプを押していく
取材に応じたぴゅあ吉さん
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最後はスタンプを押して

   Questラジオ体操部は、毎朝7時30分~8時に実施。参加するには、まずVRChatのコミュニティー機能「グループ」上で、「入部」する。毎朝7時30分ごろ、VRChat内でラジオ体操部グループのページを開くと、運営スタッフの手によってインスタンス(ユーザーが入れる空間)が立てられており、そこに入ればよい。

   会場は、朝焼けのような空に浮かんだ空間。正面には自身や他人のアバターが反射して写り込む鏡や入場者数を示すカウンター、時計を配置。側面や後方には、さまざまなVRイベントの告知ポスターが貼られている。

   8月3日朝、7時25分ごろに記者がログインすると、3人ほどユーザーが居た。次第に参加者は増え、記者のいるインスタンスは17人になった。1つのインスタンスは定員20人で、必要に応じて人数を分割するため、別のインスタンスが作られていく。一通りユーザーが入ったところで、スタートだ。

   部屋の正面側の空中に映像スクリーンが出現し、「ラジオ体操第一」のガイド音声が、聴きなじみあるピアノの旋律とともに流れていく。運動のお手本は、gif動画形式でスクリーンに流れる。手と足の運動、1、2、3、4。部屋の各所のアバターが腕を振り回す。

   ラジオ体操第二、NHKテレビ体操「みんなの体操」とこなした後は、参加者同士で集合写真を撮る。休憩のような時間だ。

   写真撮影後、EXILE USAさんが考案した「EXダンス体操」を踊る。ラジオ体操第一を含めて、20分程度で全て終了だ。その後、参加者が一列に整列。先頭の人から順番に、運営スタッフからスタンプをもらう。「ポフッ」という押印音とともに「すごい」との文字が浮かび上がるスタンプだ。運営スタッフはひとりひとり、参加者のアバター全身にこのスタンプを押し「今日もココロオドル1日を」とのメッセージを送る。

   VRゴーグルを付けながらのラジオ体操は、適度に汗がにじんでくる。慣れてくると、実際にラジオ体操会場に来たかのように、「一緒に朝から運動をした」一体感が参加者との間に生まれてくる。さわやかな気分で1日のスタートを迎えられた。

VRChatにハマる習慣づくりに

   「Questラジオ体操部」イベントオーガナイザーのぴゅあ吉さんに取材した。ラジオ体操部の活動は、2019年からだという。

   VRChatには複数の起動手段がある。パソコン(PC)にインストールしてアクセスする、あるいはVRゴーグル単体にインストールして入るといったものだ。ところが仕様上、PCに対応しているワールド(仮想の空間)には、VRゴーグル単体では入れない場合がある。

   ぴゅあ吉さんは2019年、VRゴーグル「Oculus Quest(現Meta Quest)」でVRChatの利用を開始。当初イベントを参加していたところ、ラジオ体操をする集まりがあると聞き、参加しようとした。ところがそのイベントはPC向け。Quest単体では入れなかったという。

   このとき「悔しくなっちゃって」とぴゅあ吉さん。誰でも入れる「チュートリアルワールド」という空間で、ひとりでラジオ体操するようになった。それが口コミで広がり、徐々に参加者が増えていった。これが発展し「Questラジオ体操部」に。現在では複数のインスタンスをまたいで、日々50~60人のユーザーが参加している。4年ほど前に開始してから、今まで休止したことはない。

   Questユーザーには、VRChat初心者が多い。Questラジオ体操部には、体操目的のほか、VR初心者がVRChatを楽しむ足がかりのイベントという側面があるという。室内の壁に飾ってあるポスターも、Questから入れるイベントばかりだ。

   体操で体をほぐし、スタンプを受けてログアウトする一連の流れ。これについて、「明日も(VRChatに)行ってみるか、というきっかけになれば」と、ぴゅあ吉さんは話した。

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