慶応高「107年ぶり」夏の甲子園優勝 強化のカギは「推薦入学」でも狭き門

   第105回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)で,神奈川代表の慶応高校が優勝した。第2回大会以来、107年ぶりの優勝だった。戦前からの伝統校とはいえ、長く雌伏の時代が続いていた慶応が、大躍進できたのはなぜか――。

推薦入学制度があっても、入学するのは容易ではない(写真と本文は関係ありません)
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18年には初夏連続出場

   しばしば指摘されるのは、推薦入学制度の実施だ。同校野球部のウェブサイトによると、これには2つの条件がある。中学時代の成績が良く、スポーツや文芸面での顕著な活動成績があること。この2つがクリアされていたら、1次の書類選考、2次の面接を経て、学力試験をしないで合格することができる。

   実際、慶応高校の野球部は、この制度を導入したころからパワーアップしてきた。最近では16年の夏季県大会は準優勝。新チームで臨んだ同年秋季県大会は優勝、関東大会ではベスト8。そして、17年秋季県大会では準優勝、関東大会でもベスト4に入り、2018年は春夏連続での甲子園出場を果たしている。

   有名強豪校の野球部員の出身中学などを掲載しているサイト「甲子園ミュージアム」によると、慶応高校の今回の登録選手20人のなかで、神奈川県出身者は6人。東京都が7人。栃木県が3人。千葉県、愛知県が各2人。付属の男子中学(普通部)の出身者は3人にとどまる。

 

合格は確約できない

   しかし、推薦入学制度があるとはいえ、「学業優秀」というハードルがあるため、入学するのは容易ではない。

   スポーツ報知(8月22日)の取材に、野球部の森林貴彦監督は「『受けてくれるとうれしいです』という話しか、できないんです」と語っている。

   同紙はさらに以下のように補足している。

「慶応にはスポーツ活動に文化活動も含めた推薦入試制度がある。『野球推薦』や『枠』はなく、野球部入部を志す生徒がこの制度で入れるのは1学年につき、だいたい『10人弱』といった狭き門だ。中学の内申点が満点45点中、38点以上あることが最低条件。そして作文と面接の試験を経て、合格者を決める」
「推薦で入学した現役部員に聞くと『作文はガチで準備しました』『面接に向けては中学時代に学んだことと、高校でどんな3年間を送りたいか自己分析しました』と"就活"を思わせる対策をしていた」

   赤松衡樹部長も、スポーツ報知の取材に、「ウチの制度では合格の確約が出せないんです」と語っている。

   似たような推薦入学制度は、東京の早稲田実業にもある。募集は男女合わせて約40人(スポーツと文化の二分野)。こちらも成績基準など多くの条件をクリアする必要がある。

   慶応も早実も、一般入試は首都圏でもトップレベルの最難関校。合格すればほとんど全員が慶応大や早稲田大に進めるだけあって、推薦入試も条件が厳しい。

   慶応野球部のサイトは、「慶応野球」について以下のように記している。

「単に野球ばかりできると言うのが慶応義塾の野球の本質ではありません。慶応義塾は福沢諭吉の建学の精神にのっとって作られた私塾です。スポーツを通じて成長し、野球を社会に置き換えて鍛練し、卒業生は社会のリーダーとならなければなりません」
 

「特待生」でチーム力強化

   高校野球では別途、「野球特待生制度」がある。日本高校野球連盟が「特待生」について定めた制度だ。加盟校が、野球の能力が特に優秀である生徒に対して、入学金、授業料その他これに類する負担金を免除できる。

   中学校長の推薦が必要で、高校側が、募集要項などを公表する必要がある。基準として、学業水準が一般生徒と同程度で、生活態度においても他の生徒の模範となっていることなどが求められている。「各学年5人以下が望ましい」とされている。

   高野連は、3年ごとに「特待生」について実態調査している。

   毎日新聞によると、18年4月に入学し、21年春に卒業した特待生は、全国472校で1977人。20年度の入学者は480校、2042人。1チーム当たり5人弱となっている。

   特待生制度を公表している学校名を見ると、甲子園の常連校が多い。この制度を利用し、チーム力を強化していることがわかる。

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