西洋の弦鳴楽器であるハープは右肩で支えるのに対して、百済琴の箜篌(くご)は左肩で支える。正倉院に2張しか残っていなかった箜篌を、復元した。
腕木を太ももではさみ、左の肩で胴を支える。立てると大きいけれど胴は1本の山桐を丁寧に掘り抜いて作ってあるので、想像以上に軽い。
野原さんは、かつて弦楽器を扱う会社に勤務していた。ヴァイオリンの輸入や修理の仕事などで得た楽器の知識が役立っている。
箜篌の復元制作の最終仕上げは、絹糸のチューニングだ。そもそも轉軫箜篌の「轉軫」(てんじん)とは糸巻のこと。器用に絹糸を張って調弦していく。
箜篌の腕木を床に横たえると、こんな感じになる。腕木の部分は、黒柿と花梨でできている。野原さんが信頼する、下町の古老の職人が作った。
何本もの絹糸を集めた絃が複雑に共鳴し、独特のゆらぎをもたらす。お披露目は10月1日(日)三重県文化会館中ホールにて催される『正倉院の響き』で。