2024年 4月 26日 (金)

神戸市借金地獄 「倒産」間近い?

   兵庫県・神戸市の「倒産」が騒がれ始めている。『週刊ダイヤモンド』の「倒産危険度」によれば、神戸市は堂々のトップ。経済誌『ザ・ファクタ』でも「住民1人あたり潜在債務ランキング」で3位だ。本当に危ないのか。

   『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)の2006年8月26日号の全国・市「倒産危険度」ランキングによると、神戸市が危険度第一位だった。財政再建団体への移行を決定した北海道・夕張市を押さえて、というのが、何とも衝撃的だ。この倒産危険度ランキングは、経常収支、起債制限比率、純返済年数、財政力を同社編集部が偏差値に換算し、算出したものだ。

財政的に危機だ、と見る決定的な数字がある

「倒産」がささやかれる神戸市。ほんとうに大丈夫なのか
「倒産」がささやかれる神戸市。ほんとうに大丈夫なのか

   一方、経済誌『ザ・ファクタ』8月号では、「住民1人あたり潜在債務ランキング」で3位だった。こちらは、地方債残高、債務負担行為支出限度額などから、一人当たりの債務を計算している。両者を見ても、神戸市が「倒産」しかねない過剰な債務を抱えているのは確かだ。

   神戸市が2006年8月11日に発表した2005年度決算見込みによれば、市債残高は復興基金の償還分を含めて1兆1,204億円。三位一体の改革で臨時財政対策債が減少し、前年度比で3,522億円ほど減らしたことになっているが相当な額であることには変わりがない。一方で一般会計の実質収支の方は約7,000万円の黒字。しかし、神戸新聞によれば、この黒字も財源不足を職員の給与カットや市有地の売却で補填しているため、実質的には約55億円の赤字だという。

   神戸市が財政的に危機だ、と見る決定的な数字も出ている。財政の健全性の指標とされる実質公債費比率だ。これは06年度から導入された新しい財政指標で、18%以上になると地方債の発行には国の許可が必要となり、25%以上になれば起債が制限されることになる。神戸市は24.1%と、政令指令都市のなかでこちらも堂々のワースト記録。06年度から地方債の発行が原則自由になったのにもかかわらず、神戸市の財政は起債が制限されるギリギリところにある。

空港など「ハコモノ建設」が厳しい批判にさらされている

   実際に借金がこれほどにも膨れ上がったのは何故なのか。神戸市は大きな理由として、震災の復興基金の出捐金・貸付金の市債償還に伴う公債費が莫大に膨らんだことを挙げている。しかし、市の財政危機の真相は違うところにある、という見方も有力だ。

   それは神戸空港の建設をはじめとしたハコモノ建設だ。06年2月に開港した神戸空港は、3,140億円の総事業費を要するもので、市はこれの大半を起債によって補っていると言われる。しかも、神戸市の右肩上がりの需要予測に反して、開港当初の好調から一転、搭乗率が右肩下がりになっている。市の甘い需要見込みが、今では厳しい批判にさらされている。
   また、2002年から市が始めている「医療産業都市」への巨額の投資も大きな懸念材料だ。大学、公的研究機関等を核とした「日本版シリコンバレー」を建設しようというものだ。
   こうしたハコモノ建設には、市民社会フォーラム、神戸再生フォーラムといった市民団体、新社会党・共産党といった政党からも批判の声が上がっている。神戸新聞が報じたところによると、2005年の市議会では新市庁舎の建設が新たな議題になり、「財政問題の解消が先決ではないか」と議員が迫る一幕もあったという。
   いずれにせよ、「倒産か」と騒がれるにはそれなりの根拠があり、今や神戸は「借金地獄」状態といってもおかしくない。神戸市行財政局財政部財務課に「倒産しないのか」と聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

「震災があったため、公債費の使用が膨らんでいたのは事実です。ただし、直ちに倒産するとは思っていないし、倒産するような赤字に至るような状況ではない。市も市債残高の削減や職員の人件費削減などで、倒産しないように努力しています。『週刊ダイヤモンド』の計算には問題があるし、そのような指摘も実際にしました」
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