2024年 4月 26日 (金)

長谷川洋三の産業ウォッチ
自動車: カルロス・ゴーンの上機嫌

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「われわれはいつでも対話の道を開いている(We are always open to the talks)」――。

   日産自動車社長兼最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン氏は2007年2月19日、東京・一番町の英国大使館で名誉大英勲章KBEをグレアム・フライ駐日英国大使から叙勲された後のレセプションで、最近再びにぎやかになった米ビッグスリーをめぐる国際自動車業界再編成に対する姿勢を尋ねた私に、上機嫌で答えた。

   日産は英国に英最大の自動車工場を持っており、「日産リバイバルプランの成功で英国産業界に大きな勇気を与え、英国工場の生産性の向上に役立てた」というのがフライ大使が日本語で読み上げた叙勲の理由。これに対し、ゴーンは「身に余る光栄です。英国工場の成果は5,600人英国社員の努力の賜物です」とこれまた日本語で謝辞を述べた。叙勲式にはゴーンとともに5年間日本に暮らし、ゴーンを助け、苦労を分かちあってきたゴーン夫人も駆けつけた。

   最近の日産は、06年度決算でゴーン体制後初めて減益が伝えられるなど、芳しくないニュースが多いだけに叙勲式を終わった後のレセプションで、ゴーンは終始上機嫌だった。独ダイムラークライスラー(DC)のクライスラー部門をめぐる新たな自動車業界再編成の動きが表面化しているが、「自動車再編は不可避だ。われわれは誰とでも話し合う」と積極的な発言が目立った。06年は米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携交渉が、GM側の意向で打ち切りとなるなど、思うような展開にならなかった上、業績も下り気味。「今は経営に全力を集中すべきときだ。再編成に手を割く時間はない」と公式会見では語ったものの、DCのディーター・ツェッチェ社長がクライスラー部門の分離や売却も辞さない再建に着手するとの発言を契機に入り乱れる再編成報道に無関心ではいられない様子だ。

   クライスラー部門の再建をめぐっては、GMがDCとの交渉に入ったとの報道が伝えられたほか、フォード・モーターのムラリー社長がクライスラー首脳と会う用意があると語っているが、日産・ルノーグループはフォード傘下のボルボグループと関係があリ、GMの動きに触発されてフォードが再編成に動けば、一気に日産・ルノーを巻き込んだ再々編成に発展する可能性がある。07年は国際自動車業界再編成の年となるかもしれない。


【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、日本大学大学院客員教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。


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