最後まで半鐘を叩き続けた消防団員【岩手・大槌発】

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(24日大槌発=ゆいっこ花巻支部;増子義久)


   「消防」と染め抜かれた半纏(はんてん)が決め手だった―。津波が押し寄せるのを知りながら、半鐘をたたき続けた大槌町消防団第2分団の越田冨士男さん(57)の遺体が22日、瓦礫(がれき)の下から発見された。近くには「火の用心」の標識をわずかに残した火の見櫓(やぐら)が転がっている。そこから数メ-トル離れた土砂の中に越田さんの変わり果てた姿があった。


瓦礫の中で見つかった火の見櫓の残骸=安渡小学校の近くで
瓦礫の中で見つかった火の見櫓の残骸=安渡小学校の近くで

   「半纏が見えたのですぐ、冨士男だと分かった」と幼馴染の漁船員、鈴木嘉兵衛さん(57)は言った。「あの時、一帯の電気は消え、サイレンの音も止まった。ゴ~ンという津波の轟(ごう)音の中でカンカンと半鐘の音だけが辺りに響いていた」。越田さんが叩き続けた、その音が鈴木さんの耳底にまだこびりついている。


   越田さんとは家もすぐそばだった。狩猟歴20年以上の鈴木さんは昨年のクマ猟のシ-ズン(11月15日~2月15日)に仲間と2頭を仕留めた。「正月明けにクマ汁を食わせたら、フウフウ言いながら『うまい、うまい』って。これが冨士男と一杯やった最期だった」


   大槌町安渡地区だけで8人の消防団員が犠牲になった。鈴木さんも元団員。「冨士男は大工だったが、半纏を着ると人が変わったような顔つきになった。俺もそうだったけど、消防団員はいざとなるとみんな命を捧げようと…。逃げ足の速い団員なんてな…格好が悪いもんな」。鈴木さんは言葉を噛みしめながら言って、満開の桜を見上げた。



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