2024年 4月 26日 (金)

奇跡的な救出劇がきっかけで誕生した産直店 絆の強化を誓う【岩手・花巻発】

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大漁旗がはためく三陸物産のブース。被災者の皆さんが故郷の味を買い求めた=花巻市西宮野目の結海で
大漁旗がはためく三陸物産のブース。被災者の皆さんが故郷の味を買い求めた
=花巻市西宮野目の結海で

(ゆいっこ花巻;増子義久)

   東日本大震災の際の奇跡的な救出劇がきっかけで誕生した、かけはし交流産直「結海(ゆうみ)」が11日、花巻市内にオープン。大槌町と秋田県五城目町、それに花巻市の関係者ら多数が太平洋と日本海を結ぶきずなの強化を誓い合った。


   あの日、男鹿半島に近い五城目町などの老人クラブの一行43人が大槌町吉里吉里の波板観光ホテルで観劇中に地震が発生した。営業支配人だった小笠原弘孝さん(48)ら従業員の適切な誘導で全員が高台の集会所に避難。2日後に無事、故郷に戻った。


   これがきっかけとなって両町の交流が始まり、中間点に位置する花巻市内の漬物製造業「道奥(みちのく)」(阿部久美子社長)が空き店舗になっていたレストランを無償で提供することを申し入れ、この日のオープンにこぎつけた。従業員(6人)の雇用に当たっては国の緊急雇用創出事業を導入。小笠原さんら5人の被災者が従業員として雇われた。


   その一人で現在、花巻市内に避難している平野菊枝さん(62)は当時、波板観光ホテルに勤めていた。「とにかく無我夢中で高台に誘導した」と平野さん。この日はその時に救出された猿田利美さん(80)など老人クラブの会員ら約100人が五城目町から駆けつけ「大槌の人たちは命の恩人です」と抱き合って再会を喜んだ。店内にはその時の救出劇を伝える映像も流され、全員が改めて震災の記憶を刻み直した。


   装いを新たにした店内には、木材の町として知られる五城目町の家具や刃物、大槌町など三陸沿岸の海産物など色とりどりの名産品が並べられ、その一角には「ゆいっこ花巻」のブースも設けられた。帽子や縫いぐるみ、ポーチ、針刺し…など被災者の皆さんが自立を目指して立ち上げた「はまぎくの会」の手芸品がずらり。


   大槌町の仮設住宅に住む被災者約50人もこの日、バス1台を仕立ててやってきた。お嫁さんとご主人を失った芳賀フクエさん(86)は今、吉里吉里の仮設住宅に一人で暮らしている。「花巻に避難している人たちもこんなに頑張っていると思えば…」とブースの前で涙をぬぐった。


   オープンを祝って、店舗の前の広場では大槌町の花輪田神楽や五城目町の天翔太鼓、男鹿のナマハゲ、それに地元花巻の鹿踊りが披露された。店舗を無償で提供した阿部社長が感慨無量といった口調でつぶやいた。「ここ花巻は宮沢賢治の故郷。世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はありえない。『3・11』を忘れないため、この賢治の精神を発信する拠点にしたい」。


   東日本大震災が発生した毎月11日、500年の伝統を誇る「五城目朝市」を開催。名物の郷土料理「だまこ鍋」などを振る舞うことにしている。


自立を目指して制作した手芸品を手にする被災者の皆さん=結海で
自立を目指して制作した手芸品を手にする被災者の皆さん=結海で
「復興の一助になるよう全力を尽くします」と決意を述べる5人の被災従業員の皆さん=結海で
「復興の一助になるよう全力を尽くします」と決意を述べる5人の被災従業員の皆さん
=結海で
復興を祈願する大漁の舞(花輪田神楽)に被災者の皆さんは涙を流した=結海で
復興を祈願する大漁の舞(花輪田神楽)に被災者の皆さんは涙を流した
=結海で
男鹿のナマハゲもオープンに花を添えた=結海で
男鹿のナマハゲもオープンに花を添えた=結海で
奇跡の救出劇を伝える映像に訪れた人たちは涙を流した=結海で
奇跡の救出劇を伝える映像に訪れた人たちは涙を流した=結海で
キリタンポに似た五城目名物「だまこ鍋」には長い列が=結海で
キリタンポに似た五城目名物「だまこ鍋」には長い列が=結海で


ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
ゆいっこは、「花巻」「盛岡」「北上」「横浜」「大槌」の各拠点が独立した団体として運営しておりますが、各拠点の連携はネットワークとして活用しております。
■ホームページ http://yuicco.com/
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