2024年 4月 26日 (金)

通信トラブルが異常続発 ドコモに何が起きているのか

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   NTTドコモの携帯電話を海外でも利用できる「国際ローミングサービス」が利用しにくくなり、完全復旧まで1日以上を要した。この3週間だけで、通信障害が集中的に起きている。

   年末年始にかけてもトラブルが頻発し、総務省から行政処分を受けた。ネットワークを総点検したはずだが、問題の根源は残ったままだったのか。

「最大手インフラ企業」として投資を向けるべき

「スマホ時代」に通信インフラの安定が求められる
「スマホ時代」に通信インフラの安定が求められる

   国際ローミングサービスを提供する220か国・地域で通話やメールがつながりにくくなったのは、2012年8月13日の18時24分ごろ。すべての地域でサービスが使えるようになったのは15日深夜の2時13分だ。ドコモ広報部に取材すると、通信の集中が原因だというが、詳細は「現在調査中」。復旧までに時間がかかったのは「影響の及んだ範囲が世界中に広がり、再開後にサービスを安定的に供給できるように各地の状況を見ながら作業したため」と説明する。利用者からは15日2時17分までに、1396件の問い合わせが寄せられた。

   ローミングサービスは8月2日~3日にかけても、約20時間にわたって利用困難となった。この時は他社の通信設備が故障したため、共通で使用している回線が接続、切断を繰り返す不安定な状態となったのが原因だった。これが国内にも波及。関東甲信越から東海、関西の利用者約145万人が、約1時間半、携帯電話がつながりにくくなる影響を受けたのだ。

   さらにその1週間ほど前には、スマートフォン(スマホ)向けサービス「spモード」でトラブルが起きた。7月25日、一部利用者のspモードの設定内容が、約8時間半にわたって閲覧、変更可能な状態におかれたのだ。ドコモの説明によると、全国のspモード利用者を「A面」「B面」という2つのサーバー群に分けて管理しているが、サーバーのソフトウエア更新作業で、B面のサーバーに誤ってA面用のファイルを適用した。このためA面の顧客がspモードのパスワードを入力した際に、同じパスワードを使っていたB面の顧客の情報にアクセスできるようになってしまった。

   3週間でこれだけ続いては、対応がお粗末と言われても仕方がないだろう。通信ネットワーク事情に詳しい武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏はJ-CASTニュースの取材に、「ドコモは国内の通信インフラを担う最大手。利益もそれだけ上げているはずです。最近は他社と加入者獲得合戦やスマホ開発競争を繰り広げていますが、今こそ『通信インフラ企業』としてネットワーク整備に投資を向けるべきではないでしょうか」と警鐘を鳴らす。

もともと携帯電話会社、ネットに弱さ?

   ドコモでは2011年12月から今年1月にかけても、トラブルが続出した。2011年12月20日、「spモード」でメール送信した際に、実際の送信者とは全く異なる第三者のメールアドレスが受信者側で表示されるという「前代未聞」の不具合が発生。12年元日には全国でメールが送受信しにくい状態となり、1月25日は新しく切り替えた「パケット交換機」という装置のデータ処理能力が実際のデータ量に追いつかず、東京都内で約252万人に被害が広がった。

   このため1月26日、総務省から行政指導を受ける。その後ドコモでは、ネットワーク設備の総点検と社内体制の強化を実施し、再発防止策と合わせて3月30日に報告書を提出、同社ウェブサイト上でも公開した。以後は落ち着きをみせていたが、7月25日以降再び「障害頻発」に陥っている。

   それにしても、ドコモだけトラブルが連発しているのは不思議だ。木暮氏は、「利用者数が約6000万人に上り、膨大な量の通信量をさばく仕組みが求められるため、競合他社より不利な面はあります」と話す。ドコモ側ではネットワーク整備を進めているが、完了までに時間を要するのも事実だろう。

   もうひとつ木暮氏が挙げるのが、「ドコモはもともと携帯電話の会社」という点だ。全盛時代を迎えつつあるスマホは、電話機というよりは小型のパソコン。従来型携帯電話ではモバイル通信のノウハウが最大限生かせたドコモも、インターネット接続によるデータ通信が主流となるスマホでは、「ネット対応の面で弱さが出ているのではないか」と考える。

   ドコモは「日本電信電話株式会社法」の下、NTT本体から分社化して誕生した経緯がある。NTT東西やNTTコミュニケーションズ、NTTデータなどとNTTグループを構成する1社だ。移動体通信の「専門会社」ではあるが、国際電話やデータ通信については、グループ内では別の会社の「得意分野」となる。ブロードバンド事業を手がけたのちにモバイル業界に参入したソフトバンク、国際電話事業が母体のKDDIと比べると、ネット接続や海外の通信で後手に回る面があるかもしれないと木暮氏は話す。

   今後のドコモの「あるべき姿」とは何か。木暮氏はひとつの例として、香港の携帯電話大手「香港移動通訊(CSL)」を挙げた。ここは他社より料金を高く設定しているが、「完璧なサポート、安定した通信がセールスポイントです」。「つながりやすさ」「安心のサービス」を一番大切にするなら、CSLの事業モデルが何らかのヒントをもたらすかもしれない。

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