2024年 4月 27日 (土)

次の日銀総裁は誰か 有力候補に武藤敏郎、岩田規久男らの名前

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   安倍晋三内閣がスタートし、円安、株高が進む中で、2013年4月に任期が切れる日本銀行の白川方明(まさあき)総裁の後任人事が本格的に動き出す。

   大胆な金融緩和によるデフレ脱却を最優先課題に掲げる「アベノミクス」を象徴する人事とあって、与野党の思惑もさまざまに渦巻く。

想定外だった白川氏

   日銀総裁は長く、日銀生え抜きと財務省(旧大蔵省)出身者が交互に就く「たすき掛け」が続いたが、接待汚職や財務省の天下りへの批判などから、ここ3代は日銀出身者が続いている。ただし、日銀が財務省との力関係で優位に立ったというより、「財務省(出身者)がだめという反動で、無難な日銀生え抜きの起用になっただけ」(財務省OB)というのが実態だ。

   その日銀生え抜きも、接待汚職からの緊急避難で就任した速水優氏の後、エースの福井俊彦氏(キヤノングローバル戦略研究所理事長)が就いたのは当然の流れとしても、白川現総裁の誕生は日銀にも想定外だった。財務次官から日銀副総裁に転じていた現大和総研理事長の武藤敏郎氏(69)は、5年前、福田康夫内閣が総裁昇格を提案しながら、ねじれ国会の下で当時の小沢一郎民主党代表の自民党揺さぶりの一環で参院で否決された。さらに福田内閣が提案した歴代財務次官、財務官経験者をすべて拒否され、副総裁に就いたばかりの白川氏が総裁に選び直された。

   「大胆な金融緩和を行っていただける方」。安倍首相が、こう繰り返しているように、衆院選の公約でうたった物価上昇2%のインフレ目標達成のために、積極的な金融緩和論者を軸に人選が進むのは間違いない。そして財務省OBの是非も引き続き大きな判断の分かれ目になる。

「金融緩和派」から選ばれる

   安倍首相の考え方に近いのは内閣官房参与に任命された浜田宏一・米エール大教授(77)、前日銀副総裁の岩田一政・日本経済研究センター理事長(66)、岩田規久男・学習院大教授(70)らの学者だ。安倍氏が会長を務めた「増税によらない復興財源を求める会」にも出席した安倍氏のブレーンの面々だ。

   高齢の浜田氏は除くとして、岩田一政氏は政府・日銀による外国の債券購入による円安誘導も提言し、衆院選の自民党公約に取り入れられた。旧経済企画庁(現内閣府)出身で、2003~08年の日銀副総裁時代は金融政策決定会合で利上げに反対票を投じた。岩田規久男氏は、物価目標と強力な金融緩和を主張し、日銀の伝統的な金融政策を痛烈に批判してきたバリバリの「緩和派」だ。

   学者ではこの他、2006~07年の第1次安倍内閣で、経済財政諮問会議の民間議員を務めた伊藤隆敏・東大大学院教授(62)、「小泉改革」の司令塔として経済財政相などを務めた竹中平蔵・慶大教授(61)も候補。伊藤氏は1990年代から物価目標の導入を提唱し、08年には副総裁候補に名が挙がったが、民主党にダメ出しされた。竹中氏も緩和論者だが、こちらは小泉時代の"専横"がたたり自民党内に反発する議員が少なくない。

   近年の役人批判で劣勢と見られていた財務省OBだが、ここにきて政権内で「容認」と受け取れる発言が相次ぎ、にわかに騒がしくなってきた。

   麻生太郎副総理兼財務相兼金融相が「組織を動かせる人が望ましい」(12月29日毎日朝刊インタビューなど)、「向いている人なら誰でもいい」(1月4日ミャンマーで)と、財務省出身者を積極的に推さんばかりの発言をしている。甘利明経済財政・再生相も「財務省OBでも適任の方と不適任の方がいる」(12月29日日経朝刊インタビュー)と同様の考えを示している。

   そこで有力視されるのは、やはり武藤氏。自民党とのパイプの太さはもちろん、霞が関への影響力も十分。秋以降、新聞のインタビューなどで積極的に発言、日銀のこれまでの政策が不十分との認識を繰り返し表明している。参院選を決戦場と位置づけ、「経済をこのまま上向かせるためにも、武藤氏の安定感は何物にも代えがたい」(与党筋)との声もかかる。元財務官の黒田東彦(はるひこ)・アジア開発銀行総裁(68)も、財務省内では物価目標積極派としてしられるダークホースだ。

「第三極」との提携の試金石に

   ただ、与党が参院では過半数を持たない「ねじれ国会」で、どう「多数派」を形成するかは不透明だ。白川総裁の任期は4月8日までだが、山口広秀、西村清彦両副総裁の任期は3月19日に満了となるので、それまでに正副総裁セットで人事案を決め、国会に提案することになる見込み。

   参院で自公は計102議席で、過半数に16足りない。参院第1党の民主党との合意を目指すか、「第三極」と連携するかが大きな分かれ道になる。

   安倍首相は就任前から「みんなの党はわれわれと同じ金融政策。日本維新の会も基本的に同じだ」と語っている。参院でみんなの党が11議席、維新が3議席持ち、新党改革なども抱き込めば過半数が見えてくる。

   ただし、みんなの党の渡辺喜美代表が「財務次官OBの日銀総裁への天下りには反対する」と語るように、みんなの党も維新も、「反財務省」の立場だけに、武藤氏などには難色を示す可能性が高い。

   「ねじれ国会の与野党の合意形成の試金石」(霞が関筋)とも目される日銀総裁人事だが、一筋縄ではいきそうもない。

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