五輪招致、「東京が安全ならいいのか」【福島・いわき発】

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   今は月に一、二度に減ったが、主に週末、夏井川渓谷の無量庵で土と遊び、森を巡る。無量庵を吹きぬける谷風に気を緩めていると、アブ(=写真)に刺されることがある。先日、何年かぶりに足の親指をブスリとやられた。ハチと違って痛みは尾を引かない。が、なんともいえない痛痒(いたがゆ)さが残った。


   アブは清流の生きもの。ブヨ(ブユ)もそう。同じいわき市でありながら、街にいるかぎりではアブやブヨには思いが至らない。ライフラインが整備された街のなかで暮らす人間には、すぐ隣にある自然が遠いのだ。


   いわきはハマ・マチ・ヤマの三層構造からなる。いわきを深く知るには、ときどきマチを離れてハマとヤマからマチを見ないといけない――職業柄、そう意識して長年暮らしてきた。中心からは周縁は見えない。見えるのは、周縁が中心に影響を及ぼすとき、たとえば凶作や水害、不漁のときだけだ、とも。


   中心と周縁の関係はマスメディアにも内在する。マスメディアの本社がどこにあるかでニュースの価値が決まる。事故を起こした福島第一原発に近いいわき市(地域紙・コミュニティ放送)、福島・郡山市(県紙・ローカル放送)と、東京(全国紙・全国ネット放送)とでは危機感が違う。


   全国紙であれ、全国ネットのテレビ局であれ、本質的には東京のローカル紙(局)だ。東日本大震災の初期報道がたちまち福島第一原発事故の報道に切りかわったのは、「東京にも影響が及ぶのではないか」と東京のメディアが恐れたからだと、私には映る。


   2020年夏の東京五輪開催をめざす東京招致委員会の竹田恒和理事長(日本オリンピック委員会長)が、福島第一原発から海洋に汚染水が流出している問題で、IOC(国際オリンピック委員会)の委員に対して「東京は全く影響を受けていない」「全く普段通りで安全だ」といった内容の手紙を出したという。ブエノスアイレス共同電で、県紙で読んだ。


   私は慢性の不整脈をかかえているので、カッとなるな、興奮するなと常に自分に言い聞かせている。が、これにはカチンときた。メディアだけではない、東京に住む政治・行政・その他組織のトップの本音が透けて見えるではないか。周縁を犠牲にしてなにが東京の安全だろう、なにが五輪招致だろう。

(タカじい)



タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
■ブログ http://iwakiland.blogspot.com/

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