2024年 4月 27日 (土)

「利ざや」は縮小、本業は「消耗戦」 それでも銀行決算、リーマン後最高益更新

   5大銀行グループの2013年9月中間連結決算が出そろった。アベノミクスによる市場環境の好転、貸し出し先企業の業績回復などを受け、最終利益の5大銀グループ合計は、前年同期比約6割増の1兆6569億円となり、リーマン・ショック後の最高を更新した。

   5グループとも2014年3月期通期の業績予想を上方修正。「本業中の本業」である貸し出しも増加はしているが、「稼ぎのもと」となる貸し出し利息が低下傾向にあるなど、課題も多い。

株高、円安、アベノミクスさまさま

銀行各社はアベノミクスで好調(写真は、三菱UFJフィナンシャル・グループのサイト)
銀行各社はアベノミクスで好調(写真は、三菱UFJフィナンシャル・グループのサイト)

   「株高、円安を引き寄せたアベノミクスの成果が有効に機能した」。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の平野信行社長、三井住友FGの宮田孝一社長、みずほFGの佐藤康博社長ら、各社のトップは異口同音にこう指摘した。

   各行の利益が伸びた要因の一つが株高だ。株価が低迷していた前年同期には保有株の減損処理が利益を押し下げたが、13年の4~9月の日経平均株価は1万3000円~1万5000円程度に回復。そのため減損処理額は5グループ計で300億円台にとどまり、7000億円を超えた前年同期から大幅に縮小した。株高は投資信託の販売も増やし、販売手数料の増加を呼び込み、二重の意味で収益に貢献した。

   また、三菱UFJの平野社長が「(取引先の)業績回復が大企業から中堅・中小企業に広がっている」と語ったように融資先の業績が改善したことが、銀行の業績にも好影響を与えた。融資先への貸し倒れに備える費用が想定を下回り、銀行業界で「戻り益」と呼ばれる利益が5グループ合計で2000億円超も生じたのだ。

上半期の国債売買益は前年同期比で約8割減

   一方、ここ数年の銀行決算の新聞記事では、「国債頼みの銀行経営」と指摘されることが多かったが、その状況が変わったことを示したのも今回の中間決算だ。前年同期は国債価格が上昇局面にあり、各行とも多額の国債売買益を計上したが、「もうこれ以上国債価格が上がりようはない」(債券アナリスト)相場環境の出現などにより、今年度上半期の国債売買益は前年同期比で約8割も減り、もはや「国債頼み」とは言えない。メガバンク各行は12年来、国債保有残高を減らしており、「国債頼み」の脱却を自ら進めてもいる。

   それでは「国債頼み」の次は何か、というと、これがはっきりしなくなる。

   柱になるべきは、本業中の本業と言える企業や個人への貸し出しだ。5グループの貸し出し残高自体は増えている。9月末時点の残高は1年前に比べれば8%増加し、順調なようにも見える。しかし押し上げたのは海外で、国内の貸し出しの伸びは3%程度にとどまる。各社トップによる会見では、これも異口同音に「設備投資などの本格的な資金需要がまだ起こっていない」との声が聞かれた。

住宅ローン金利なども過去最低水準

   貸し出しで利益を生むための金利環境も厳しい。日銀による異次元緩和で金利が押さえ込まれているため、企業にとってはお金を借りやすい局面だが、銀行にとっては「薄利多売」的な状況だ。住宅ローン金利なども過去最低水準で「消耗戦」(大手行幹部)なのが実情だ。

   銀行が企業などへの貸し出しで得られる利回りから預金者などに支払う利回りを差し引いた「利ざや」は縮小を続け、例えば三菱UFJは前年同期に比べて0.11ポイント下がって1.03%と過去最低水準。リーマン前には1.5%程度が普通だっただけに利益に大きく影響している。「資金需要を掘り起こす」(みずほの佐藤社長)しかないが、企業には手元資金も潤沢で、一朝一夕にはいきそうもない。

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