2024年 4月 27日 (土)

「解散・同日選」前提のアベノミクス下支えか 予算成立前に「経済対策」が語られ出した

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   総額96兆7218億円にのぼる2016年度予算案は、3月1日に衆院を通過する見通しになり、3月末までの「年度内成立」が確実になった。と、思ったら、早くも政府・与党では景気対策の声が出始めた。

   16年の年明け以降の世界的な株価下落など金融不安が背景にあり、市場では「補正予算5兆円」といった声も飛び出す。16年夏の参院選に向けて経済のテコ入れが欠かせないということだが、アベノミクスの失敗を認めることになりかねない面もあり、果たしてこの動き、吉と出るか凶と出るか。

  • 安倍政権のシナリオに陰りが出てきている?
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財務相「必要と判断すれば機動的に対応していく」

   予算案審議の最中に政府・与党側が追加の景気対策を口にするのはタブー。野党は当然ながら「予算案が不十分なら組み替えろ」と求める。年度内成立が固まったとはいえ、参院審議前でもあり、常識的には国会審議をないがしろにするものとのそしりは免れないのだが、「安倍一強」の故か、政権内で景気対策に関する発言が出始めた。

   麻生太郎財務相は2月23日の衆院財務金融委員会で、追加の経済対策に関して「必要と判断すれば機動的に対応していく」と言明。2016年度予算の成立直後に補正予算案を編成する可能性について「経済状況による」と、否定しなかった。

   与党の声はもっと露骨だ。自民党の二階俊博総務会長は22日の党役員会で「経済対策を議論すべきだとの声が出ている」と指摘。選挙を控えた参院側は、より前のめりで、吉田博美参院国対委員長は23日の記者会見で「きちんとした対策は必要だ」と打ち上げた。

   さらに、安倍晋三首相の経済政策のブレーンである本田悦朗内閣官房参与は、日銀の金融緩和とともに、「政府も経済対策の実施など財政面から景気を下支えする必要がある」(「読売」2月23日朝刊)と訴えている。

   市場の声も具体的になっている。藤戸則弘・三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資情報部長は早くも2月15日付のリポートで「できるだけ速く、財政出動の景気対策、金融政策、為替介入策を含めた『総合経済対策』を煮詰めることが重要だ」として、「補正予算3.3兆円枠に、さらに上積み」を求め、日経23日夕刊では「5兆円規模の補正予算を打ち出すべきだ」と提言している。

6月1日衆院解散、7月10日衆参同日選挙というシナリオ?

   元々、安倍政権は、参院選に向けて、経済政策を慎重に運営する段取りを描いていた。16年春闘では過去2年に引き続き、経営側の尻を叩いて賃上げを実施させるとともに、2015年度補正予算に盛り込んだ低所得の年金受給者への3万円給付も3月中に受け付けを始め、夏に向けて個人消費を盛り上げる。また、15年来のプッシュで経団連に事実上、約束させた「設備投資上積み」の数字が、各社から「新年度の計画」として、今後、続々と出てくるはずだ。

   さらに、1億総活躍国民会議や経済財政諮問会議では、「子育て支援」「介護離職防止」などとともに、「同一労働同一賃金」まで打ち上げるなど、中期的な政策を詰めており、5、6月に今後の経済運営の大きな方向を示すことになる。

   安倍政権としては、こうした手順を踏んだ上で、参院選を万全な態勢で迎える戦略だった。6月1日に衆院を解散、7月10日に衆参同日選というシナリオもささやかれてきた。

   そうしたなかで、年明け以降の世界的な金融不安で日本も円高・株安に見舞われた。安倍政権のシナリオに陰りが出てきているという懸念から、政権・与党内から景気対策を求める声が上がっている、というわけだ。

首相ブレーンが消費税増税の「凍結」を主張

   政府は今のところ、中国をはじめとする原油安と新興国経済の不振はあっても、日本経済は堅調、との基本認識を維持している。2月25日の月例経済報告は、海外経済全体には「弱さがみられる」との文言で6カ月ぶりに下方修正する一方、国内景気は「一部に弱さも見られるが緩やかな回復基調が続いている」との基調判断を変えなかった。

   当面、経済動向を慎重に見極めるということで、政府・与党の景気対策への言及も、いざとなれば対策を打つ姿勢を示し、賃上げや設備投資増など政権のシナリオにマイナスの影響を与えないようにしたいという期待の反映といったところだ。

   ただ、円高や株安が一層進んだり、賃上げが不十分に終わるなど先行きに不透明感が増す恐れは十分にある。その時に安倍首相はどう動くのか。

   経済の失速の可能性が高まれば、「2017年4月の消費税率10%への引き上げは必ず凍結すべきだ」(本田内閣官房参与、「毎日」24日朝刊)という声が勢いを増す可能性もある。それと、「解散・同日選挙」がどう絡むのか―。経済も政治も不透明感を増してきた。

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