2024年 5月 3日 (金)

日産は不正・三菱を切ることができるのか 「軽自動車」めぐる両社の深刻な関係

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   三菱自動車工業が4車種で、燃費を実際より良く見せるため、不正な操作を行っていた問題で、2016年4月26日に相川哲郎社長が2回目の記者会見を開き、これ以外に、1991年から法令と異なる試験方法で国内向け車両の燃費データを計測していことを明らかにした。

   三菱自にとって「会社の存続にかかわるぐらいの大きな事案」(相川社長)であるのはもちろんだが、軽自動車の供給を受けていた日産自動車の経営への打撃も大きい。ことは単なる「三菱自問題」にとどまらず、「日産問題」としてもクローズアップされてきた。

  • 日産と三菱が提携を解消する可能性もある。写真は日産のカルロス・ゴーン社長(2014年7月撮影)
    日産と三菱が提携を解消する可能性もある。写真は日産のカルロス・ゴーン社長(2014年7月撮影)
  • 日産と三菱が提携を解消する可能性もある。写真は日産のカルロス・ゴーン社長(2014年7月撮影)

共同開発車は2013年にデビュー

   三菱自は2000年代前半に大規模なリコール(回収・無償修理)隠し問題で経営危機に陥ったのは記憶に新しいが、その前から現在に至るまで、25年間も、違法な測定を続けていたことになる。

   最初に不正を公表した軽自動車4車種は、「eKワゴン」と日産自動車に供給していた「DAYZ(デイズ)」、そしてそれらの改造モデルの「eKスペース」と「デイズルークス」。三菱自と日産が共同開発した初の軽自動車として、2013年6月にデビューした。両社の合弁会社「NMKV」が企画・開発した姉妹車で、ハイトワゴンと呼ばれる激戦区の売れ筋モデルだ。共同開発と言ってもエンジンやトランスミッションなどは三菱自製で、当時は「クラストップの低燃費29.2キロ/リットル(JC08モード)を実現した」というのが最大のセールスポイントだった。

   ライバルはダイハツ「ムーヴ」、スズキ「ワゴンR」「ホンダN BOX」などだ。当時のハイトワゴンではムーヴがリッター当たり29.0キロでクラストップの低燃費を誇っていた。三菱自にとって、日産との姉妹車の投入でクラストップに立つのは至上命題だったに違いにない。日産のあるエンジニアは「軽の燃費開発競争は熾烈を極めている。トップ争いはスズキとダイハツしかできず、ホンダでさえ燃費競争から距離を置こうとしている。三菱自はこれに追いつき、追い越そうとしたのだろう」と漏らす。

三菱の補償額は数千億円にも

   しかし、不正を働いて獲得したクラストップの燃費も束の間。その後は瞬く間にスズキとダイハツに抜かれ、後塵を拝すことになる。このため、三菱自と日産の間で次期軽自動車の開発を日産が担うことになったのは自然の流れだ。「次期車の商品力を上げるためにも日産にお願いした方が魅力的になるのではないか」と、相川社長は認めている。

   今回の問題で、今後、事態はどう進んでいくのか。

   長年続いた違法な測定の問題が、4車種以外にどう広がるかは今後の調査を待たねばならないが、不正が明らかなeKワゴンとデイズについては、「型式認証」を国土交通省が取り消す可能性がある。そうなれば、国内で初めてのこと。信用力の低下は避けられない。三菱自が日産ブランド分を含めて燃料代の差額を補填したり、販売したクルマを買い取ったりなどの補償に発展する可能性も高く、補償額は数千億円に膨らむとの見方もある。

   燃費の数値操作で購入者が軽自動車税を軽減された分の追加納税分も負担することになり、これも100億円を下らないとみられる。三菱自の経営は根底から揺らぎ、まさに会社存亡の危機に立たされている。

ゴーン社長は、まだ決定していない

   日産にとっても、打撃は極めて大きい。全国の日産のディーラーからはデイズ、デイズルークスが一斉に撤去されたが、顧客から「不正を働いたデイズを買い取ってくれ」といったクレームが早くも届いているという。

   日産と三菱自の提携解消――。誰もが、当然連想するところだが、事はそれほど単純ではない。日産の2015年のデイズ、デイズルークスの販売台数は約15万台で、日産の国内販売の4分の1を占める主力車種。販売店にとって、軽は品ぞろえとして不可欠な存在で、どう商品を確保するか、極めて深刻な問題だ。

   生産面の関係も、簡単に切れるものではない。日産は次期軽自動車の開発を主導するものの、軽のエンジンやトランスミッションを持たず、生産工場もない。日産が新たに工場を設け、自前で軽を生産する決断をするなら別だが、「現実に軽は利幅が少なく、即座に設備投資を決断するのは難しい。タイなど海外の生産工場でも三菱自と提携しており、簡単に関係を打ち切るのは難しい」(日産関係者)という。他社との提携を検討するにしても、簡単に右から左へ乗り換えられるものでもなく、何年もかける大仕事になる。

   カルロス・ゴーン日産社長が4月26日に自動車ショーのため訪問中の北京での会見で、「すべての事実がテーブルの上に出そろってから決定を下す」と述べ、三菱自の調査結果を待つ姿勢を強調したのも、状況判断を慎重にしたいとの考えの表れだろう。

   三菱自は第三者調査委員会を設け、3カ月ほどかけて不正の全容解明を進めるという。三菱自自体の生き残りがいばらの道なのはもちろん、日産の対応もまた、厳しいものになる。

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