2024年 4月 26日 (金)

小池都知事の試金石 築地市場の「移転延期」あるか

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   「東京都民の台所」である「築地市場」(中央区)が「豊洲市場」(江東区)へ移転する予定の2016年11月7日まで3か月を切りながら、計画通り進むか、はっきりしない事態になっている。先の都知事選で圧勝した小池百合子知事が選挙戦から「一歩立ち止まるべきだ」と繰り返し、移転延期も視野に入れているように見えるからだ。これ以上遅れると、2020年の東京五輪・パラリンピックにも影響が出かねないだけに、関係者はやきもきしている。

   「安全性の確認、使い勝手の問題、皆さまの納得をいただくために一歩立ち止まるべきだ。急がば回れでみんなが納得する結論を出したい」。選挙戦最中の7月22日、小池氏が築地市場近くで行った演説でそう訴えた。

  • 「東京都民の台所」の築地市場。小池新都知事は予定通りに移転を決行するのだろうか。
    「東京都民の台所」の築地市場。小池新都知事は予定通りに移転を決行するのだろうか。
  • 「東京都民の台所」の築地市場。小池新都知事は予定通りに移転を決行するのだろうか。

移転計画は最終段階

   8月2日の就任後も、3日の都の部局からの説明を受けた後に「まだよく理解していかなければならない。そういう意味では、立ち止まって考えなければならない」と繰り返し、さらに5日の就任後初の定例会見でも「11月7日の開場に向け、引っ越しも決まっていると承知している。一方で延期や反対の声がある。市場関係者に話を聞きたい。安全性についても専門家に改めてヒアリングする。都民の納得が得られるものか、スケジュールを見ながら見極める」と、慎重な言い回しに終始した。

   豊洲移転問題の経緯は、築地市場が手狭になったことや老朽化したことを受け、2001年に計画決定し、都側と築地市場業界との協議を経て2004年7月に「豊洲新市場基本計画」が策定された。たが、2007年に用地の土壌汚染が発覚して、その処理に時間を費やしたほか、使い勝手の問題なども指摘され、開場予定が何度も延期された。そして土壌汚染対策が完了した後の2014年12月に、2016年11月開場が正式に決まった。

   移転計画は最終段階に入っており、多くの業者も11月移転を前提に準備を進めている。例えば築地での冷蔵庫や製氷機のリース契約は10月まで、豊洲で新しく11月からの契約が始まることにしている場合、移転が延期になれば契約を見直す必要が出てくる。引っ越し作業の段取りも組み直しになる。

   豊洲移転の遅れは、2020年の東京五輪にも悪影響があるという。選手村が建設される臨海部と都心を結ぶ環状2号道路の一部は築地市場の地下を通ることになっているからだ。工事は築地から市場が出て行って更地になっていることが前提になる。ただでさえ環状2号の開通は五輪開会直前になる見通しで、豊洲移転が遅れると五輪開会に間に合わなくなる恐れが出てくる。

「延期なら大混乱」と懸念も

   一方、築地で営業する仲卸業者や周辺の場外市場関係者らの中には、今も移転反対論が根強い。第1の理由は土壌汚染問題だ。移転反対・慎重派には「実際は汚染除去が済んでいない状態では」との疑念がある。

   第2に交通の利便性の悪さも指摘される。新交通ゆりかもめしかなく、新橋駅始発は朝の6時で、明け方から活動が始まる市場だけに、働く人、買い出しに来る飲食店関係者らは不便を強いられる可能性がある。

   ここにきて床が抜けるという懸念も注目されている。反対派によると、新市場で仲卸業者が入るエリアの床積載荷重の限度は、1平方メートル当たり700キロなのに対し、築地で現在行き交っている荷物運搬用の小型車は積荷を含めると2トンにもなるといい、強度的に耐えられないのではないか、というのだ。

   このほか、新市場の集客の上で重要な「千客万来施設」にも暗雲がただよう。運営事業者に予定されていた大和ハウスと「すしざんまい」を展開する喜代村が、2015年に相次いで撤退を決め、再公募で「万葉倶楽部」が事業者に決まったが、開業は2018年以降と大きく遅れる。

   こうした問題を抱えるからこそ、都知事選でも争点の一つになり、小池氏もあえて慎重論を唱えたわけで、移転慎重派からは「小池さんなら移転を延期してくれるだろう」との期待も膨らむ。一方、「現実に移転延期でも決めようものなら大混乱に陥る」(都政関係者)とも懸念されており、延期決断のハードルは極めて高い。

   選挙戦での自身の発言とどのように折り合いをつけ、どのような方向性を打ち出し、軟着陸させるか。新知事の最初の試金石になる。

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