高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
 マイナンバーの次にくる 富裕層の脱・節税対策

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   この2016年の年末、マイナンバーを各所に提出する必要があり慌ただしい人もいるだろう。筆者もいろいろなメディアで書いているので、大量の書類を出している。そのセキュリティの扱いは様々であり、まさにマイナンバーいろいろである。

   2013年5月24日に「マイナンバー法」が成立し、16年1月から「社会保障・税番号制度」が実施された。このため、対従業員、対取引先、対株主・出資者で、対応すべき事務がでている。

  • マイナンバーが徐々に社会に浸透してきている
    マイナンバーが徐々に社会に浸透してきている

源泉徴収などで利用

   対従業員では、税務として、2016年分から源泉徴収票等の法定調書に、従業員の個人番号を記載することとなった。

   社会保険としては、雇用保険は16年1月から、健康保険・厚生年金保険は17年1月から、健康保険組合や年金事務所、ハローワーク等への提出書類にも、従業員等の個人番号が必要となった。

   対取引先では、報酬、料金、契約金及び賞金、不動産使用料等の支払調書等で個人番号・法人番号を記載することになった。

   対株主・出資者では、配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書で個人番号・法人番号を記載することになった。ただし、氏名・住所を告知(みなし告知)している既存の株主・出資者につき、16年1月1日から3年間の経過措置がある。

   こうした措置によって、マイナンバーが徐々に社会に浸透している。具体的には、源泉徴収票や各種の支払調書などにおいて、氏名の隣に個人番号が記載される新しい欄が作られる。

   個人の番号だけに注目が集まっているが、対取引先や対株主・出資者では、個人番号だけでなく法人番号も記載義務がある。

   個人番号(マイナンバー)は、市区町村が付番する12桁の数字であり、外国人を含めた住民票コードを持つ者全員が対象だ。提供を受ける際、本人確認が必要となり、収集、保管、利用、提供等に厳格な規制がある。この規制のために、原則として、役所に書面を提出する場面以外では利用できない。

高額紙幣の廃止

   一方、法人番号(「企業版マイナンバー」)が、国税庁が付番する13桁の数字で、すべての法人に付与される。この企業版マイナンバーでは、扱いに規制はなく民間で自由に利用していい。国税のウェブサイトで、商号、本店所在地、法人番号等が公開される予定である。

   マイナンバーは徐々に社会に浸透している。そうなってくると、不安になってくるのが、所得を把握されたくない富裕層である。いずれは、マイナンバーが金融機関の口座開設にも利用される。そうなると、架空預金口座を持つのはかなり難しくなる。さらに、各種税務書類にマイナンバーが使われるようになり、金融機関口座とマイナンバーとリンクされるようになると、税務当局は脱税を見つけ易くなる。

   財務当局が、課税申告を怪しいと思ったら、その人の資金フローを徹底的に調べる。しかし、現状では、金融機関の預金口座を完璧に調べることはできない。複数の預金口座をもち、架空口座を使えば、口座名寄せもできないからだ。

   マイナンバーが浸透する時代に脱税・節税をしようとするなら、国内の現金取引か海外取引を使わざるを得なくなるだろう。実際、マイナンバー導入によって、タンス預金のための現金需要が多くなっているという話も聞こえてくる。

   次に来るのが、電子決済への切り替えなどのよる現金レス社会への流れだ。主要国における現金紙幣の対GDP比は、3~8%程度であるのに対して、インドは12%程度になっている。なお、日本は20%と主要国の中ではダントツに高い。

   そこで考えられるのが、電子決済への切り替えなどとともに、高額紙幣の廃止である。日本と同じような現金社会であったインドでは高額紙幣が廃止された。ユーロやベネズエラでも高額紙幣が廃止され、カナダやシンガポールも段階的に高額紙幣の流通を減らし、現金レス社会への移行が世界の大きな潮流である。

   日本でも高額紙幣を徐々に少なくするような方向だろう。でも、この流れは、脱税・不正蓄財とは無関係な庶民には関係ない。むしろ課税の公平が確保されるので望ましいことである。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「これが世界と日本経済の真実だ」(悟空出版)など。


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