ミニッツ・シンキング

自分と他人 快適空間

縄張りの実態は泡 スタート

研究される「心の縄張り」

「心の縄張り」の研究は、人類学者のエドワード・T・ホールによって1960年代に始まりました。そして多民族が住み、異文化の混在するアメリカで特に発展します。
縄張りは 「パーソナル・スペース」いう身体を取り囲む空間としてとらえられ、空間の形や特徴、性質や働きが解き明かされてきました。
そこでわかったのは…

パーソナル・スペースは泡

…とタイトルに書いたように、心の縄張り:パーソナル・スペースは、人の体を取り巻く「泡のような」空間だということです。
この泡は、誰の目にも見えません。そして本人も、泡の中にいることを意識していません。
泡というと、やわらかくて、形や大きさが変わる印象を受けますね。
参考

『人と人との快適距離-パーソナル・スペースとは何か-』 渋谷昌三 著  日本放送教会出版会

携帯する心の縄張り

私たちはこの泡を、持ち運びながら生活しています。それは「モバイル・マイ空間」。そこに他人が侵入してくると、心は不快感や嫌悪感を覚えます。
泡が大きい人ほど、「侵入されてる感」が強く、他人の接近を息苦しく感じます。

そして、心は身体にあらわれます。
たとえば、苦手な人が近づいてきたときの無意識な動作…一歩さがる、顔をちょっとそむける、目を合わせないようにする、物を胸に抱えるなど…がそれです。
避けちゃイケナイ場合はどうする

仕事や円滑な人間関係のために、後ずさりしちゃいけない場合ってありますね。
「あっ、あの人苦手」と思ったら、近づかれる前に、こちらから近づいてしまうという手もあります。相手に気づかれず、心の準備をしながら。
さらに、相手の正面ではなく左横に接近できれば上々。なぜかって? その秘密は、次の章のどこかに!

自分のパーソナル・スペース

あなたの「泡」は、どんな空間でしょうか。

それは、あなたが作り、自分で持っているもの。
どんな空間になるかを決める要素は、周囲の環境にもありますが、ふだんは性格や性別や年齢など、ほとんどあなた自身のなかにあります。

相手のパーソナル・スペース

あなたと関わる、あの人の「泡」はどうでしょうか。

相手が持つ空間のようすは、あなたとその人との社会的な地位関係や、互いの親しさなどによって決まってきます。
そしてそれは、あなたがその人をどんなふうに認めているかによって、変化してきます。

パパは寂しいぞ

「幼稚園の頃は、本を読んでやると、頭をくっつけるようにして聴いていたのに…いつもうるさいほどまとわりついていたのに…このごろわが子は自分の部屋に入ってばかり。ちっとも寄り付かない」と、ある日ちょっと寂しく思ったお父さん。
幼稚園の頃は、まだパーソナル・スペースが小さかったのです。
解説1

このスペース、年齢と共に大きくなって12歳頃にはおとなとほぼ同じくらい。この年頃の子どもが自分の空間を欲しがり、親と距離を置きたがっても、「親子の危機」というわけではありません。
解説2

パーソナル・スペースはその後も緩やかに大きくなり、40歳くらいで最大になります。しかしさらに年齢を重ねると、今度はまた徐々に小さくなっていくのです。
解説3

母親の胸に密着し、空間を共有していた赤ちゃんも、幼児になれば分離して
パーソナル・スペースを持ちます。でもまだ小さいスペースです。
これは、他者への依存度が高いためだと思われます。
しかし子どもはさまざまな人間関係を通して、
徐々に他人との間に保つべき距離を学んでいくのです。
成長と共に依存度が下がり、自律性が高まれば、パーソナル・スペースも大きくなります。
まだまだ子どもと思っていても、おとなと同じような心の縄張りが必要になってくるのです。
それは、おとなにふさわしい距離感とも言えるでしょう。
個人差や健康状態などの要因もありますが、高齢になると依存性への回帰が見られるようです。

関わりあうスペース

あなたと他人の「泡」。それは相手を認めることで、互いの関係に最もふさわしいように変化して、設定される性質を持っています。

相手の「泡」、パーソナル・スペースを理解することで、親しい人との関係がよりスムーズに、もっと温かいものになるかもしれません。

「泡」は、どんな形で、どのくらいの大きさなのでしょう。次の章で解説します。

縄張りの実態は「泡」 |
もどる すすむ 前へ 次へ
Copyright (c) Kamakura Women's University. × J-CAST. Inc. 2011. All rights reserved.