200年ほど続いたゴシック美術では、モザイクや黄金背景を使い、重要なものを中心に大きく描いた作品が多く見られました。そこに遠近法や、説得力のある表情が生まれ、徐々にルネサンスへと移行します。ここで一つの視点から物を正確に捉え、遠近感を科学的に再現する透視図法が誕生。ルネサンス期の芸術家は、数学的な知識や、高い描写力を求められるようになるのです。
生涯学習センター講師 ●伊藤 淳
200年ほど続いたゴシック美術では、モザイクや黄金背景を使い、重要なものを中心に大きく描いた作品が多く見られました。そこに遠近法や、説得力のある表情が生まれ、徐々にルネサンスへと移行します。ここで一つの視点から物を正確に捉え、遠近感を科学的に再現する透視図法が誕生。ルネサンス期の芸術家は、数学的な知識や、高い描写力を求められるようになるのです。
それまでの壁画では重要な人物が大きく描かれていましたが、マザッチオはすべての人物を等身大にして、聖なる序列を “位置の高さ” で表しています。
そして「父なる神」「子のキリスト」「精霊(キリストの頭上の白い鳩)」の聖三位一体を、一点透視図法で見事に描きました。
部分拡大図で、遠近法の描線を見てみましょう。
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この絵の正面に立ち、壁画の天井部分にあたる奥行きのある格子を基準に線を引くと、左右中心の下方に消失点が現れます。
消失点からある定点(距離点)で離れて見ると、三次元空間の広がりを感じることができるのです。
遠近法を使って空間を現実的に表現するようになると、人体もできるだけ正確に再現することが求められます。そこで、人の筋肉が実際どのようについているのかが、研究されるようになりました。
特にレオナルド・ダ・ヴィンチは、何体もの解剖を実際に手がけています。
ルネサンス美術の特徴の二つ目は、このリアルな肉体表現なのです。
1520年、ラファエロが没すると、ルネサンスも後期に入ります。
このころ【ミケランジェロやラファエロといった、巨匠のマニエラ(手法)こそ高度の芸術的手法】と考え、その手法をアレンジして用いた作品が多くなります。
その中で、知識階級を中心に寓意画や奇想的な作品が求められるようになりました。
これが後期ルネサンスの特徴である、マニエリスムです。マニエリスムの代表作品を観てみましょう。
『 十字架降下 』 は多くの画家がテーマにしていますが、ポントルモは、背景のない、浮遊的な空間と色彩を演出しました。 フィレンツェのサンタ・フェリチタ聖堂のカッポーニ礼拝堂に飾られている、マニエリスム様式の傑作です。 絶妙な配置の登場人物は、しかし焦点が定まらず、どことなく虚ろな顔。これは見る者を不安にさせます。人々に身をゆだねるキリストは、ミケランジェロの彫刻 『 ピエタ 』 をほうふつとさせます。
正解は2.愛は理性に勝つです。
木を削り、弓を作っているのは愛の神キューピッド。彼の左足は、分厚い書物を踏んでいます。 学問を象徴する書物は理性を表すので、この寓意画は、「理性に打ち勝つ愛の力」と捉えることができます。 ただ、その力は永遠に続くのかどうか、わかりませんが…
正解は3.欺瞞を体現するです。
『 愛のアレゴリー(寓話) 』 で、ヴィーナスと息子キューピッドが抱擁しています。その右後ろからのぞいている少女ですが…
彼女が差し出す手は左右が逆。しかもその手には触ると危険な蜂の巣とサソリの尾が。
そして彼女の下半身は蛇。蛇はキリスト教社会では邪悪の象徴です。
さらにその傍らには、人を欺く仮面が2つ。
「この愛はかなり疑わしい」と、作者のブロンヅィーノが語っているようです。
ジャンボローニャはメディチ家の別荘のために、高さ約10mの巨大な彫刻を制作しました。
この像は、イタリアを縦断するアペニン山脈を擬人化したものです。
アペンニーノは左手で、吐水口の動物の頭部をおさえています。こうした奇抜な彫刻が、後期ルネサンス(マニエリスム)には数多く登場しました。
正解は1.調味料入れです。
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