15世紀のイタリアから、あと2人の巨匠に登場していただきましょう。
左がフィリッポ・リッピ( 1406~69年)、右がボッティチェリ( 1444/45~1510年)です。
生涯学習センター講師 ●伊藤 淳
15世紀のイタリアから、あと2人の巨匠に登場していただきましょう。
左がフィリッポ・リッピ( 1406~69年)、右がボッティチェリ( 1444/45~1510年)です。
実は、私も修道士だった。だが、フラ・アンジェリコみたいな敬虔な人物を想像しないでほしい。数々の浮名を流し、50歳の時には、自分が司祭をしていた修道院の修道女と、駆け落ちまでやってのけた。 私はこの件で告発された。しかし、コジモ・デ・メディチが教皇にとりなしてくれたおかげで、無事、還俗できたのだ。 これは、そんな騒ぎも落ち着いたころの作品だ。従来の聖母と異なり「画期的」といわれるこの聖母…どうだ、美しいだろう。モデルが誰か、わかるかな?
正解は1.リッピの妻だといわれるです。
修道女だった19歳のとき、リッピと駆け落ちして結ばれた、ルクレツィア・ブーティだといわれます。
人間らしく、そして甘美に描かれた聖母は、前髪を剃り上げておでこを広く見せ、真珠のような宝石をあしらい、透き通るベールがついた髪飾りで装っています。
これは、当時の最先端ファッション。
そして右下で得意そうな笑顔を見せている天使は、後に画家として活躍した息子のフィリッピーノだといわれます。
「ボッティチェリ」は「小さな樽」のこと。兄が太っていたからこんなあだ名を付けられた。兄は金細工の工房をやっていて、はじめはそこで勉強した。でもリッピさんの工房に入門してからが、本格的な修行。おかげでメディチ家の庇護も受けられた。
さて、30代半ばに描いたこの作品、ルネサンスそのものを感じないか? とても異教的、官能的なテーマなのだが。
正解は1.①の男性です。
愛と生命力に満ちた多神教の神々。②は三美神、③はゼフェロス(西風)。
そして左端で片手を腰に、暇そうなしぐさをしている①がメルクリウス。彼には、死者の魂を冥界に案内する役目があります。
神々の伝令者として素早い動きをするメルクリウス。惑星としては水星にあたり、商業や旅行者の守護神とも言われます。
しかしこの「春」の絵で彼が着ている赤い服には、逆さまの炎が描き込まれています。
これは「死」を表すものなのです。
「美術はこんなに面白い ルネサンス導入編」はいかがでしたか?
皆さんはまだ、入り口に立ったばかりです。まだまだ魅力がいっぱいのルネサンス美術。
「三大巨匠編」も、お楽しみに!
このミニッツ・シンキングは、鎌倉女子大学の伊藤 淳講師(生涯学習センター)のお話を元に構成しました。
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