社会保障の「事業主負担分」という幻想

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   法人税の引き下げの議論が進んでいる。自民、民主ともに明言しているので、あとはタイミングと幅の問題だろう。最低5%、できれば10%程度の引き下げが望ましい。

   ところで、「社会保険の事業主負担も含めて考えれば、日本企業の負担はむしろ低い方だ」という意見を、メディアでもたまに目にする。だから法人税引き下げなんて論外で、むしろ負担を増やせというロジックだ。良い機会なので簡単に説明しておこう。

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実質的に人件費、すべて労働者が負担している

   結論から言うと「事業主の負担分」なんてものは存在しない。それはすべて労働者本人の負担である。

   たとえば、庭に落ちた500円硬貨を拾う仕事のために、山本君を450円で雇ったとしよう。分かりやすくするために、社会保険料の本人負担分50円、事業主負担分50円のみとする。

   仮に、共産党が単独政権をとって、志位総理がこう宣言したとする。

「経営者は悪です! 社会保険料は100%すべて、悪の経営者に負担させましょう!」

   翌月からの給与明細では、「事業主負担100円、手取り400円」と印刷されるだけで、本人の手取りは変わらない。

   その後、今度はみんなの党が政権奪取して、渡辺総理が政策転換したとする。

「小さな政府同様、小さな経営! 事業主負担はゼロにしましょう!」

   翌月の明細は、本人負担の保険料天引き100円となっているものの、やはり手取りは400円のまま。

   つまり、事業主負担とか社会保険料とか呼び名が変わるだけで、会社からすれば、山本君のために「人件費を500円負担している」という現実に変わりはないわけだ。

   山本君からすれば「雇い主が負担してくれている」と見えるかもしれないが、それだけの働きを求められているわけだから、それは実質的には山本君の負担に過ぎない。

   よって、企業の負担について高いか低いか議論する場合には、あくまで法人税のみを対象とし、社会保障の企業負担分については除いて議論するのが一般的である。

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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