2024年 4月 26日 (金)

最近、天才に出会った 「規格外」上原ひろみの音

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Beyond Standard(NEW ALBUM)
上原ひろみ ~Hiromi's Sonicbloom/2008年5月28日発売
初回限定盤[CD+DVD] UCCT-9007  2800円
通常盤[CD] UCCT-1197 2500円
UNIVERSAL MUSIC


   時々神が降りてくる。それこそ100年に一度か、50年に一度か、その頻度は定かでないが、明らかに神の仕業としか思えない出来事に出くわす。こう書くとなにやら怪しげな宗教がらみの話になりそうだが、違います。芸術、ことに音楽の世界には神がかりとしか思えないような出来事が起こる頻度が高いという話。

   それは多くの場合、演奏者の卓越した技術であったり、創られた曲の素晴らしさであったり、演奏者の存在そのものだったりする。ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトがそうであり、彼の生まれ変わりといわれたユアン・アリアガがそうであり、ラフマニノフがそうであり、ビートルズがそうであり……ジミ・ヘンドリックスもそうかな……と、だんだん訳が分からなくなるわけだが、要は、天才の音楽はいつまでも人の心に残るということだ。

   そして、その天才の創る音楽にオンタイムで出会うことはなかなか難しいし、現実にその天才と出会い話すこととなれば、これは尋常一様のことではない。

   その天才に、最近出会った。

   上原ひろみ。一般的にはジャズ・ピアニストとして知られる。確かにジャズ・ピアニストなのだが、そのスピリットはどちらかといえばロックに近い。一見した印象は華奢な女性なのだが、静かに話す口ぶりからは思いもつかないハードな言葉が飛び出してくる。例えば「ロックギターの歪んだ音」が好きだとか、ギターの音に嫉妬する、だとか。

   そして新しいアルバムのプロモーションの一環で行われたミニコンサートで、彼女の弾くジョージ・ガーシュウィンの「アイ・ガット・リズム」を間近に観て聴いて、筆者は吹っ飛んでしまった。CDを聴くだけでは決して理解できない、世界水準の実力、感性もテクニックも無縁の高みにある"力"に圧倒されたのだ。それは「時々降りてくる神」の力とも思えるものだった。

   ニューアルバムは『Beyond Standard』。このBeyondの意味を聞くと「スタンダードからはみ出る・越える、基準・規格を越える」というWミーニングだと言う。アルバムに収められた様々なジャンルの「スタンダード・ナンバー」は、上原ひろみの力でまったく別の命を与えられ、見事に音盤に蘇っている。


【Beyond Standard  収録曲】

1. イントロ-朝日の如くさわやかに
2. 朝日の如くさわやかに
3. 月の光
4. キャラヴァン 
5. 上を向いて歩こう
6. マイ・フェイヴァリット・シングス
7. レッド・ブーツ
8. XYG
9. アイ・ガット・リズム
10. リターン・オブ・カンフー・ワールド・チャンピオン(日本盤ボーナス・トラック)

*2008年1月ニューヨークで録音

*上原ひろみ(P,Keys) トニー・グレイ(B) マーティン・ヴァリホラ(Ds) デヴィッド・フュージンスキー(G)

加藤普



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70〜80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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