2024年 4月 27日 (土)

上海の美人スパイめぐる"新解釈" 日中両国の平和希求する"素顔"描く

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上海エイレーネー」(大薗治夫著、ブイツーソリューション刊、1890円)

   物語の主人公のモデルは、しばしば"スパイ"として描かれてきた実在の女性、鄭蘋如(テンピンルー、ていひんにょ)。1930年代後半から1940年代前半の日中戦争時の上海を舞台に、工作員として成功・活躍する様子から、その"最期"までが語られる。現在、複雑なかじ取りが求められている中国との関係だが、その原型ともいえる、80年ほど前の"抗日運動"が盛んだったころの日中関係について詳しく知ることもできる。

元財務省官僚、2作目の小説

上海エイレーネー
上海エイレーネー

   著者の大薗治夫(おおその・はるお)氏は、1987年に大蔵省(現財務省)に入省し、証券局、主税局などを経て、95年から在上海日本総領事館領事を務めた。98年に帰国して退官するが、同年から中国情報発信のウェブサイト編集長として上海に駐在し、2011年に同社を退社し著作活動を本格化させている。本書は、大薗氏の2作目の小説。

   さて「上海エイレーネー」の「エイレーネー」は、ギリシャ神話に登場する平和を司る女神のこと。タイトルの意味は「上海の平和の女神」であり、著者によれば、その内容は「上海を舞台とした平和の物語」という。

   「日中戦争を背景にした女スパイのドキュメント小説が、平和の物語って…」と思われがちだが、本書のタイトルこそが、鄭蘋如をめぐる著者の新解釈だ。大薗さんは「お読みいただく前に」という、本書紹介のウェブサイトに寄せた文章で、こう述べている。

「最新の資料や証言をも加えて読み解けば、別の彼女の姿が見えてきます。そこで本作では、彼女を日中両国の狭間で悩み苦しみ、両国間の平和を希求する女性と捉えて、暗殺に加わった理由などについて仮説を加えつつ、より素顔に近い彼女を描くことを試みています」
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