2024年 4月 29日 (月)

すっかり熱冷めて 郵政民営化迷走

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   4事業会社のトップ内定に続き、民営化後の経営計画も決まり、小泉政権の構造改革の目玉の郵政民営化は表面的には、07年10月のスタートに向け順調に進んでいるように見える。しかし、実際には、小泉政権の任期切れが近づき、政治の郵政改革熱が急速に冷める中、26万人を超える巨大組織は、旧郵政官僚や労組、全国特定郵便局長会(全特)などの利害が錯綜し、リーダーシップ不在で迷走する懸念さえ強まっている。

   「郵政改革のモメンタム(機運)が薄れているなどということはいささかもない」。小泉純一郎首相とともに"二人三脚"で郵政民営化を推進してきた竹中平蔵総務・郵政民営化担当相は7月11日の4事業会社のトップ内定会見でこう語気を荒めた。

三菱東京からトップ派遣を拒否される

郵政4事業会社の行方はどうなるのか
郵政4事業会社の行方はどうなるのか

   郵政民営化では現在の日本郵政公社の事業を、持ち株会社、日本郵政の傘下で、手紙や小包を扱う郵便事業会社▽郵便窓口を運営する郵便局会社▽郵便貯金銀行(ゆうちょ銀行)▽簡易保険を引き継ぐ郵便保険会社(かんぽ生命保険)の4事業会社に再編する。このうち、銀行と生保は民営化後10年目の2017年までに国の関与を無くす完全民営化することが法律で決まっている。
   全国2万4,600局の郵便局網を擁し、200兆円の郵便貯金の資金を扱う巨大な郵政事業を民営化の軌道に乗せられるかどうかのカギは、民営化を進める経営者のリーダーシップと精緻な事業計画の策定にかかっていた。このうち、経営者選びでは、竹中担当相が昨年11月、日本郵政の初代社長に"カリスマバンカー"西川善文・前三井住友銀行頭取を電撃指名。しかし、その後、4事業会社のトップ探しは難航し、7月11日になって、ゆうちょ銀行社長に三菱商事元副社長の古川洽次(こうじ)氏▽かんぽ生保社長に旧東京海上火災保険専務の進藤丈介氏▽郵便事業会社社長に北村憲雄トヨタイタリア会長▽郵便局(窓口ネットワーク)会社社長にイトーヨーカ堂執行役員物流部長の川茂夫氏――をそれぞれ充てる人事をようやく決めた。ただ、選考の過程では、三菱東京UFJ銀行からトップ派遣を拒否されるなど迷走ぶりも目立った。

ゆうちょ銀行は「焼け太り」

   4会社のトップ内定の遅れは経営計画作りにも影響。本来なら、計画の実行を担う4氏が全く計画策定に関与しない異例の展開となり、結局、7月末に公表された計画は持ち株会社、日本郵政の西川社長の意向を強く反映した金融(ゆうちょ銀とかんぽ生保)重視路線だけが目立つバランスを欠く内容になった。
   対照的に、今期、赤字へ逆戻りし、経営先行きが心配される郵便事業会社や、「他に例のない会社形態」(生田正治日本郵政公社総裁)という郵便局会社の明確なビジネスモデルは明確に示されないまま。一方で、本来、規模縮小が筋のゆうちょ銀行は、信託銀行業務への参入まで打ち出すなど肥大化路線が鮮明だ。
   「4事業のどれかがこけただけでも、郵政民営化は失敗に終わる」(公社幹部)というのに、「銀行業務にしか知見も関心もない」とされる西川社長。今秋には小泉政権の退陣とともに、後ろ盾の竹中担当相も内閣を去ることから、先行きを不安視する声も大きい。民営化の手綱裁きを誤り、経営がリーダーシップを失えば、郵政事業は再び旧郵政官僚や、労組、全特の利害の支配される旧体制に逆戻りしかねず、郵政改革の理念も画餅に終わりかねない。

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