2024年 5月 2日 (木)

米YouTubeの「市民記者育成」 「ニュース報道のノウハウ」とは

   米YouTubeが市民記者向けにニュース報道のノウハウを紹介する新チャンネル「YouTube Reporters' Center」を立ち上げた。チャンネルの中では、報道機関で活躍する記者たちが、取材方法や事実確認の手法などについて語っている。ただ、これだけで「書ける市民記者」への道が開けるかというと、そう簡単でもなさそうだ。

ウォーターゲート事件報道で知られるボブ・ウッドワードも参加

   米YouTubeが専用チャンネル「YouTube Reporters' Center」を開設したのは2009年6月29日。講師陣には、たとえば、ワシントン・ポスト紙に所属するボブ・ウッドワードさんやニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ニコラス・クリストフさんらが参加している。ボブ・ウッドワードさんとは1972年に起きたウォーターゲート事件を政権からの圧力にも屈せず調査報道し、当時のニクソン大統領を辞任に追い込んだ人物。ピュリツァー賞も受賞している。

   専用チャンネルには今のところ、約30本の動画があり、いずれも5分ほどにまとめられている。その中でも8万回以上再生されていて、最も人気がある動画が「Katie Couric on how to conduct a good interview【良いインタビューを行う方法】」。この動画の中では、CBSイブニングニュースの人気キャスター、ケイティ・コーリックさんがインタビューの手法について語っている。

   彼女によると、インタビューのコツは、相手のためにあたたかい気持ちで言葉やボディランゲージを使うこと。インタビューの内容によって声のトーンを変えること。答えが脱線したときには同調して、答えを引き出すことにつとめること。結果を想定して――この人はどんな答えをするだろうかを考えながら質問すること。その中でも、インタビューにおいては、聞く姿勢がとても大事なのだと強調している。

事件のとき、携帯電話で動画を撮影するコツ

   ニューヨーク・タイムズのニコラスさんは、危険地域の取材方法について話している。それによると、最も大事なことは、行動には十分気をつけること。現地の人からの指示には必ず従い、銃を持った人物とは争わない、財布は2つ持ち歩くなどだ。彼は報道の姿勢について、アメリカ人視聴者へ貧困や飢餓に対する興味を持たせることが大事なのだと訴えかけた。現在、3万回以上閲覧されている。

   また、政治ブログポータル「ハフィントン・ポスト」の編集長アリアナ・ハフィントンさんは、YouTubeを通じて動画がアップできるようになった現在、情熱と、そして、訓練を積むことによって誰でも市民記者になれると話していた。実際、イランでは外国人ジャーナリストが退去させられ、現地の様子は動画サイトにアップされた映像によって知りうる状況にもある。そうしたこともあって、アリアナさんは市民ジャーナリズムの重要性を強調する。

   ところで、実際に一般人が何らかの事件に遭ったときには、どうやって動画を撮影すればいいのか――その方法について紹介する動画もあった。その動画「How to Capture Breaking News on Your Cell Phone【携帯電話で速報を記録する方法】」ではmobile journalism(携帯電話による報道)として、自分が事件に遭遇したとき、携帯電話で動画を撮影するコツが紹介されているのだ。

   それによると、危険には近づかないことを前提として、まずは高画質の動画で撮影することが求められる。そして、メモリーカードには、記憶容量の大きいものを選びたい。一方、現場ではよくよく自分自身の安全を確保するとともに、状況を判断。撮影するときには手ぶれのないように、両手を使った方がいい。ズームをするよりは自分が近づいて撮影すると臨場感が出るなどとあった。なお、撮影した動画はアップロードすることを忘れずに、とも付け加えられていた。

   こうした市民記者育成動画の登場について、市民メディア「オーマイニュース」で編集長をつとめたこともある元木昌彦さんは、「市民記者数を増やすことには役に立つかもしれない」として、次のように話す。

「私が『オーマイニュース』をやっていたときにも、多くの市民記者から、テーマの見つけ方、取材のノウハウ、原稿のまとめ方についての質問を受けました。実際、プロの書き手を招いて、市民記者向けの勉強会を開いたこともあります。その経験から言えば、基本的な疑問に答えているこのサイトは、市民記者を志す人たちの背を押すでしょう」
「ただ、市民記者であれ、プロの記者であれ、記事を書くときに大事なことは、書くということへの『覚悟』があるか否かです。書いたものを発表することには、リスクを伴うもの。そうしたことを教えるとともに、市民記者の才能を開花させるにはやはり、FACE TO FACEで指導する必要もありそうです。『書きたい市民記者』から『書ける市民記者』への道のりは、そう平坦ではないのです」
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