2024年 4月 27日 (土)

インターネットが政治変える 31歳千葉市長の「IT選挙術」
(インタビュー「若者を棄てない政治」第1回/千葉市長・熊谷俊人さん)

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   全国で次々と30代の市長が誕生している。現職最年少は2009年6月に千葉市長に就任した熊谷俊人さん(31歳)だ。IT企業出身の熊谷さんはネットを駆使して政策をアピールし、当選を勝ち取った。市政でもネット活用を目指す若手市長は「インターネットが使えない議員は生き残れない」と断言する。

ホームページで「カンパ金額」をリアルタイムに更新

「Twitterやニコニコ動画も市役所の広報で使えるんじゃないかと注目している」と
いう熊谷俊人・千葉市長
「Twitterやニコニコ動画も市役所の広報で使えるんじゃないかと注目している」という熊谷俊人・千葉市長

――新卒で就職したのはNTTコミュニケーションズですが、そこではどんな仕事をしていたのですか?

熊谷 入社してから4年間、事業部長のお付き部隊で事業部の運営に関わっていました。経営会議とか取締役会とか会社全体の経営に関与することになるので、大きな組織がどういう意思決定で動いているのか、トップにふさわしいのはどんな人というのが実感としてわかる。NTTは半官半民みたいな会社で、私は企画系の部署という官僚的な立場にいたので、お役人の気持ちも痛いほど分かります。そのときの経験が、市役所という組織を動かす今の仕事にすごく生きています。

――NTTコミュニケーションズといえば、日本を代表するIT企業でもありますね。

熊谷 ITという面では、NTTグループのウェブサイトの統合作業にずっとたずさわってきましたし、今後のITビジネスがどういう方向に行くのかという研究会に加わって、戦略ペーパーを作ったりもしました。NTTというのは日本のITに責任を持っている企業で、「次の次の世代」のことを考えているわけです。その意味では、私は最先端のITの情報を政治の世界に持ち込んできています。

――IT業界での経験を生かして、市長選ではどのようにITやネットを活用したのでしょうか?

熊谷 まず、ホームページの充実ですね。私は市議会議員時代からホームページに力を入れていて、議会が開かれるごとに論点や質問内容を全部掲載していましたし、ブログも毎日更新していました。市長選でも、マニフェスト(政権公約)は全部のせたし、出馬表明した日にはその動画をユーチューブ(YouTube)にすぐアップしました。街頭演説のスケジュールも告示直前に出せる分だけバンと掲載しました。

――ホームページには、マニフェストの内容をわかりやすく説明した動画も掲載されていますね。

熊谷 動画では、支援者のメッセージも載せました。あとは、カンパですね。オバマ流カンパじゃないけど、企業献金をもらわないので市民のみなさんにカンパをお願いしました。そしたら想像以上に、500万円近くのお金が集まった。その金額をホームページ上でリアルタイムに更新していったんです。毎日通帳記帳して金額のカウンターをあげていく。インターネットをやっているなかでは、この「リアルタイム性」が一番燃えますからね。とにかく、いまの公選法でできるインターネットの活用はすべてやったと思いますよ。

「ケータイ」と「動画」で市政情報も発信

――市長選ではインターネットを使った「電子行政」に本格的に取り組むことを公約していました。具体的にはどんなことを考えているのでしょうか?

熊谷 まず一つは「ネット割引」ですね。ネットを使って電子申請してもらえば、市民にとって便利であるだけでなく、行政の手間もはぶけるわけです。それに対して何らかのインセンティブを与えて、ネットでの申請を一気に普及させていきたい。

――電子行政の推進に対しては、ネットに疎い高齢者に不公平だという「デジタルデバイド」の批判もありますが?

熊谷 デジタルデバイドというのは、それによってアクセスできない人が出ることです。しかし既存の紙ベースの申請方法も残しておいて、電子申請をプラスアルファでやるのですから、デジタルデバイドではない。不公平といわれる筋合いのものではないですよ。

――市役所のホームページも改革するといっていますね?

熊谷 いまのホームページはとりあえずアップしておけばいいという感じになってしまっている。でも市民が最後までしっかりと見られないのでは、情報を載せてないのと同じ。こうなってしまっているのはホームページ専用の部隊がいないからなので、専門部署をしっかり作って、ホームページの効果を最大限にする検討をしなければいけません。

――ホームページの改革のために、市民の編集委員に参加してもらうことも検討しているそうですね。

熊谷 はい。市民サイドに立って作り直す必要がありますから。あと、これからのホームページは、パソコン用だけというのはもう古い。いまや若い人は携帯でインターネットを見る時代なんだから、ドコモとかの公式サイトになって、コンテンツを充実させる。それから、動画です。15秒とか20秒のムービーを作って肉声でしゃべるようにする。これからは文字よりも、映像と音声で情報を伝えるべきですね。

ネット使えるかどうかで議員の価値決まる

――ネットの活用となると、若い世代のほうが長けています。最近、若い市長が全国で次々と生まれています。これはいい兆候でしょうか。

熊谷 いい兆候、というよりも、必然でしょう。なぜ若い首長が生まれているかといえば、右肩上がりの経済成長が終わったのが一番大きいと思います。実はこれまでの長い日本の歴史のなかで、右肩上がりが終わるというのは初めてのことです。ここから先は、誰も予測できない世界に突入していく。そういう意味では、60代の行政経験豊かな人も、30代や20代の人もまったく同じなんですよ。

――新しい変化に対応しなければいけないという点では、かえって若い人のほうが向いているのでしょうか?

熊谷 右肩上がりの時代は終わったという天動説から地動説への変化に、まだ多くの人は対応しきれていない。でも我々、20代や30代の世代というのは、物心がついたときには右肩上がりが終わっていたわけです。だから、これからはそういう若い世代が政治をリードしていくべきなんだろうと思いますね。

――しかし、「政治は経験が重要だ」という考え方も根強いように思いますが?

熊谷 たしかに今までは、政治に経験は必要でした。しかし、インターネットがすべてを変えてしまった。政治家の派閥やグループがなぜあったのかというと、政治に関する情報を吸い上げるためです。でも今は、千葉市が他の市と比べてどうかとか、他市の先行事例とか、ほとんどの政策に関する情報はインターネットで調べることができる。だから、1期の新米議員と8期のベテラン議員が、政策研究という点では同じレベルに立ててしまう。

――インターネットの活用という点では、若い議員のほうがむしろ有利といえそうですね。

熊谷 いまや選挙で何回当選しているのかではなく、インターネットを使えるかどうかで議員の価値が決まってしまう。その点では若手が有利ですが、年配の議員でも、私の尊敬する議員はみんなインターネットを使っていますよ。政策研究をまじめにやろうとしている議員だったら、当然インターネットも使うに決まっています。それに対応できない議員は、これからはもう生き残れないんだと思いますね。

※インタビュー第2回は、元ライブドア社長の堀江貴文さんです。
(当初予定していたフリーライターの赤木智弘さんは第3回に掲載します)


熊谷 俊人さん プロフィール
くまがい としひと 1978年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、NTTコミュニケーションズ入社。企画部門で事業統合や部門間調整などの業務を経験した。07年4月に千葉市議会議員に当選。09年6月、現職市長の汚職辞任に伴う千葉市長選で当選し、政令指定都市では歴代最年少の31歳という若さで市長に就任した。

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