2024年 5月 6日 (月)

サントリーが欧州老舗飲料買収 キリンとの統合有利にする思惑も

   食品業界国内2位のサントリーホールディングスがフランスの大手炭酸飲料メーカー「オレンジーナ・シュウェップス・グループ」の株式を100%取得し、完全子会社とすることになった。サントリーは国内では同首位のキリンホールディングスと2009年内にも経営統合することを目指しているが、欧州の大手飲料メーカーを先に買収することによって自らのブランド価値を高め、経営統合後のキリンとの力関係を有利なものにしようという狙いもあるようだ。

「世界で一番古いソフトドリンクメーカー」

   オレンジーナ・シュウェップス・グループはフランスのパリを本拠地に、欧州はじめアフリカ、アジア、中近東など世界80カ国に販路をもつ欧州を代表する老舗の飲料メーカーだ。日本では主力の果汁飲料「オレンジーナ」の商品名こそ馴染みが薄いが、炭酸ミネラルウォーター「シュウェップス」の知名度は高く、世界ではミネラルウォーターから炭酸飲料、ジュース、スポーツドリンクなど23のブランドを展開する。とりわけシュウェプスは1783年から存在する「世界で一番古いソフトドリンクメーカー」として知られている。

   しかし、同グループの経営基盤は、欧州におけるそのブランド力ほど確固したものではなかったようだ。日本国内の事例を挙げるなら、シュウェップスの販売がこれまでアサヒビール、UCCを経て、現在は日本コカ・コーラに移っていることからもわかるように、欧州以外の進出先の市場では知名度の低さゆえに苦戦を強いられてきた。

   このため、同グループの歩みはオレンジーナとシュウェップスの両ブランドを核とする合従連衡の歴史でもあった。1969年には英国製菓大手のキャドバリー社とシュウェップス社が合併し、キャドバリー・シュウェップス社が誕生。同社が01年にオレンジーナ社を買収したが、06年には英国系投資ファンド「ライオン・キャピタル」と米国系投資ファンド「ブラックストーン・グループ」に買収され、08年に両ブランドを引き継ぐ現在のグループ名となった経緯がある。

キリン・サントリー連合が世界5位から4位に浮上

   今回、サントリーは両ファンドから、同グループの株式を100%取得することで合意した。買収額は約26億ユーロ(約3500億円)となる模様だ。この金額は06年にブラックストーン・グループなどがキャドバリー社から買収した約26億ドル(約2400億円)を上回る。同グループをめぐっては、アサヒビールがサントリーに対抗して買収に名乗りを上げると海外メディアで報じられるなど、一時は情報が錯綜し、報道が過熱する一幕もあった。

   グループの売上高は10億ユーロ(約1320億円)。買収の結果、サントリーが経営統合交渉を進めているキリンホールディングスと合算した売上高は約3兆9480億円となり、世界の食品メーカーの08年の売上高としては、キリン・サントリー連合が現在の5位から、米国のクラフト・フーズ(3兆8550億円)を抜いて4位になる。

   サントリーが今回の交渉を進めた背景には、欧州など海外の市場開拓を急ぐ同社の世界戦略がある。サントリーは英仏などにワインやウイスキーの製造拠点を持つが、清涼飲料の基盤はない。オレンジーナ・シュウェップス・グループを傘下に収めれば、世界規模で事業展開できる環境が整うからだ。サントリーと経営統合交渉を進めるキリンも、欧州への進出は進んではおらず、大きな方向としてはキリン・サントリー連合の将来戦略に沿うもの。ただ、サントリーが先手を打って欧州飲料メーカーの買収に成功すれば、キリンとの統合交渉を有利に進めることができるとの思惑もありそうだ。

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