2024年 4月 30日 (火)

「パンドラの箱」開けてしまった 普天間で混迷深まる鳩山政権

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   沖縄の米軍普天間基地の移設をめぐって、鳩山政権が迷走を続けている。来日したオバマ米大統領との首脳会談で解決に向かうかと思いきや、「過去の日米合意」を前提にするオバマ大統領と、「日米合意にはしばられない」という鳩山首相の違いが会談のあとに表面化した。揺れ動く「鳩山発言」には政権内外から異論が噴出。深まる一方の混迷状態に対して、「パンドラの箱を開けてしまった」との声も出ている。

   2009年11月13日に東京で開かれた日米首脳会談は、鳩山首相とオバマ大統領が笑顔で語り合い、両国の強い絆を再確認したかにみえた。しかし普天間基地の移設という最重要課題は本格的に議論されることなく、先送り。新たに設けられた「閣僚級の作業グループ」で話し合われることとされた。

共同会見でみえていたオバマと鳩山の間の「亀裂」

オバマ大統領は「東京演説」で普天間問題にも言及した
オバマ大統領は「東京演説」で普天間問題にも言及した

   この作業グループには日米の外務・防衛担当閣僚が首席代表として参加することになっているが、そこで何を議論するのか、鳩山首相とオバマ大統領では理解が違うようだ。亀裂は13日の首脳会談後に行われた共同記者会見ですでにあらわれていた。

   鳩山首相は、普天間基地に関する首脳会談の内容として、

「日本政府としても前政権の日米合意はやはり重く受け止めている旨、ただ選挙の時に、自分たちが沖縄県民に県外・国外への移設を申し上げたことも事実である旨申し上げた。また、そのことによって沖縄県民の期待感は強まっているということもあると申し上げた」

と述べ、過去の日米合意にしばられずに議論したいという姿勢を暗に示した。しかし、隣にいたオバマ大統領は、

「日米両国は在沖米軍の再編に関する二国政府間合意の実施(implementation of the agreement that our two governments reached)に焦点をあてるハイレベルのワーキング・グループを設置した」

と発言。作業グループの目的は、あくまでも「日米合意の実施」にあるとした。オバマ大統領は翌14日に東京・赤坂のサントリーホールで行った講演でも

「我々(オバマ大統領と鳩山首相)は、沖縄駐留米軍の再編に関して両国政府が達成した合意を実施するために、共同作業グループを通して迅速に進めてゆくことで合意した」

と話し、名護市の辺野古沿岸部に移設するという自民党政権時代の日米合意が大前提であるとする米国側の姿勢を明確にした。

   ところが選挙前に「最低でも県外移設」と発言し、総理就任後も現行計画を前提としない姿勢を明らかにしていた鳩山首相は14日、訪問先のシンガポールで、オバマ大統領への反論を試みる。

「オバマ大統領の気持ちからすれば、『日米合意が前提だ』という思いもあるだろうが、それならばわざわざ日米で作業部会をつくる必要もない。答えが決まっているのであれば意味がない」

   鳩山首相にしてみれば、オバマ大統領の演説が大々的に報道されることで「日米合意が前提」という米国側の主張が既成事実化することを恐れたのかもしれない。

「沖縄県民の期待だけを煽って、一体、どうおさめようというのか」

   だが、日米関係を悪化させかねないこの発言に対しては、自民党の石破茂政調会長が「首相の(大統領に対する)背信行為だ」と厳しく批判。政権内部でも、15日にNHKの討論番組に出演した長島昭久防衛政務官が

「オバマさんは演説の中で今の日米合意を迅速に実行するという言い方をされている。それにもかかわらず、総理は『今の合意を前提にするわけでもない』というお話をされて、正直、一瞬びっくりした」

と発言し、困惑を隠さなかった。

   県外移設も視野に入れているとされる鳩山首相の姿勢には、閣僚のなかからも異論があがっている。沖縄の米軍基地を緊急視察し、地元首長と意見交換した岡田克也外相は16日の会見で、問題解決までの時間が限られていることを指摘したうえで、

「自民党政権のもとで、すでに米軍再編について一定の合意がなされているなかで、それを白紙に戻して議論するという選択は、私は非常に難しいと思う」

と県外移設に否定的な見解を改めて示した。

   しかし、このような政権内外の逆風も「宇宙人」の鳩山首相にはどこ吹く風のようだ。16日朝、首相公邸前で記者団に次のように語ったのだ。

「日米合意は当然重視するとオバマ大統領には申し上げた。しかし、その合意のもとにすべてを決めるという話であれば、議論する必要がなくなる。議論する意味というものを、オバマ大統領も実際にはよくわかってくださっている」

   問題解決の道筋が見えないどころか、道を覆う霧がどんどん深くなっていくようにみえる普天間問題。態度のはっきりしない政権を尻目に、沖縄では県外移設を求める声が高まっている。このままズルズルと年を越し、1月の名護市長選を迎えれば、さらなる「百家争鳴」状態を招くことはほぼ明らかだ。

   このような混乱状態に対して、普天間基地返還を合意した橋本龍太郎政権で首相秘書官を担当した経験をもつ江田憲司衆院議員(みんなの党)は、自らのホームページのコラムで痛烈な批判を浴びせている。

「最も致命的なことは、この政権で誰一人、当時のように、血ヘドを吐き、地べたをはいずり回るような調整もせず、沖縄の声にも真摯に向き合わず、『やれ県外だ、国外だ』『いや嘉手納への移転だ』と『ほざいている』だけのところだ。
   県外や国外への移設。それに越したことはないだろう。であるならば、そんなことは、ある程度、県外や国外に具体的な移設先を想定し、実現可能性を探った上で言うべきだろう。しかし、この政権では一切、そうしたことをした形跡がない。いたずらに、沖縄県民の期待だけを煽って、一体、どうおさめようというのか。私には、もう『パンドラの箱』を開けてしまったようにしか思えない」
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