2024年 4月 29日 (月)

郵貯限度額3000万円に引き上げ 大手銀猛反対しない裏事情

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   「郵政改革法案」(仮称)が通常国会に提出されるのを前に、ゆうちょ銀行の預入限度額引き上げに民間金融機関が猛反対している。現行の1000万円を3000万円になる見通しだ。全国銀行協会はゆうちょ銀行の目的から大きく乖離すると反発しているが、反対運動はあまり盛り上がりを見せていない。

   ゆうちょ銀行の貯金残高は、2009年12月末で約176兆円。「貯蓄から投資へ」の流れが加速していることや、「民営化」に伴って地方の郵便局が廃止になったことなどで残高は、ピークの約260兆円(1999年末)から大幅に減少。それでも、民間最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループの約119兆円(連結ベース)との差はなお大きい。

大手銀行は冷ややかで、信金・信組と温度差

郵貯限度額の引き上げ(写真は09年12月撮影)
郵貯限度額の引き上げ(写真は09年12月撮影)

   国営への「逆戻り」に、銀行界は反対を表明しているが、なかでも郵貯と地域で競合する信金・信組は「肥大化阻止」に懸命だ。ペイオフ解禁を前にした90年代後半から2000年代前半の金融危機で経営破たんが続出し、信用不安で預金が郵貯に流れたことが「トラウマ」になっている。

   郵貯限度額の引き上げに伴い、信金・信組について亀井静香金融・郵政改革相が一時、ペイオフ限度額の上限を3000万円に引き上げる案を示した。

   「ペイオフが3000万円になるとしても、それではかえって危ない金融機関と思われるし、そういう問題ではない。ひとたび信用不安が起これば、国営というだけで郵貯に資金が流れるのは過去の金融危機で証明されている」と、東京都内信金の役員は憤慨する。

   しかし、反対運動はいま一つ。「(手応えは)いいことない」(地銀幹部)と盛り上がらない。全銀協は2010年2月23日に、「郵政改革に関する私どもの考え方」を公表。ホームページなどで国民に理解を求めているが、かんぽ生命の加入限度額引き上げに揺れる生保業界が、86万人もの「反対署名」を集めて政府・与党に訴えたのと比べると、あまりに力が入らない。大手銀行は冷ややかで、信金・信組との温度差は埋まらない。

民間銀行も国債の引き受けには腰が引けてきた

   銀行が盛り上がらない理由は、「国債の引き受け」にある。ゆうちょ銀行は集めた資金の大半を国債で運用している、巨大な「引き受け手」だ。今後も地方などの不採算郵便局の維持や非正規社員の正社員化など、お金がかかることばかりが目白押しなので、収益を確保するには規模の拡大と融資などの事業拡大しか手がない。

   一方、長引く金融緩和で、銀行もまたダブついている資金を国債の購入に充てている。しかし、国債の増発で長期金利が上昇する(国債暴落)リスクが懸念され、民間銀行も国債の引き受けには腰が引けてきた。実際に、国債の保有を減らす動きも出ている。

   銀行も必要以上に国債を押し付けられても困るから、ゆうちょ銀行が預入限度額を引き上げることで引き受けてくれるのであれば、銀行にとって、それはそれでかまわないというわけだ。

   また、全銀協の調べでは、郵貯の平均残高が限度額の1000万円を大きく下回っていることから、現行制度のままで十分だし、たとえ3000万円に引き上げても影響はあまりないと高を括っているフシもある。

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