2024年 5月 7日 (火)

政治漂流 2010参院選 
機密費からマスコミへ回ったカネ 「個室で記者に30万円」証言
ジャーナリスト上杉隆さんに聞く

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大マスコミは調査せずに「受け取りありません」

――評論家以外の反応はどうでしたか。

上杉 複数のテレビ局の幹部からは、私が入手した機密費の配布リストの内容を教えてくれ、と電話がかかってきました。局の番組に出演する評論家たちの名前が入っているかどうかを知りたがっていて、慌てぶりが伝わってくるようでした。しかし、新聞などはこの問題を掘り下げようとしません。東京新聞が自社幹部へ取材した記事が唯一の例外で、ほかは野中さんのインタビューを載せるぐらい、ほとんどは野中さんの講演会での発言を小さく伝えた程度です。

――新聞社やテレビ局にも個別に質問されたそうですね。

上杉 社内の記者に機密費が渡されたことはあるか、と社内調査をしたか・する予定はあるか、の2点を大手新聞・テレビ・通信社に週刊ポスト取材班と共に質問し、同誌(6月18日・25日合併号)で報じました。全社、事実上ゼロ回答で、ほとんどの社は、調査もせずに「ありません」と答えてきました。「ないと確信」とか「聞いておりません」というのもありました。「政治とカネ」をマスコミが追及する際、政治家や党が調査もせずに「ありません」と答えたら、「説明責任を果たせ」とどれだけ激しく批判することでしょうか。
   個人的なことになりますが、この問題を週刊ポストで報じ始めた(2010年)5月中旬から、テレビ局からの仕事依頼が激減し、なくなってきています。機密費の話をされると困るという空気がまん延しているようです。

――上杉さんは、ニューヨークタイムズ東京支局の記者経験者ですが、海外での事例はどうなのでしょうか。

上杉 アメリカではメディア側の警戒心が強く、「2ドルルール」「5ドルル―ル」などの自主ルールが設けられています。300円のコーヒー代程度を超えたら賄賂とみなされる、という感じです。これを破れば完全にメディア界から追放されます。

――マスコミへの機密費使用問題で、政治側がやるべきことは何でしょうか。

上杉 基本的には政治側でなく、メディア側の意識の問題だと思います。自主的に対応可能なはずで、そのためには社内調査などのウミを出す作業も必要でしょう。菅内閣でも仙谷由人官房長官が、使途公表のルールづくりなどを検討した鳩山由紀夫内閣の方針を引き継ぐ考えを表明しています。例えば100年後に公開、などでも良いのではないでしょうか。100年後には関係者は存命していないでしょうが、名誉に関わる話ですので十分「抑止力」になると思います。

上杉隆さん(@uesugitakashi) プロフィール
うえすぎ たかし 1968年、福岡県生まれ。ニューヨークタイムズ東京支局の取材記者などを経て、鳩山邦夫衆院議員の公設秘書も経験。現在フリーのジャーナリストとして主に政治分野やゴルフを取材している。CS放送の朝日ニュースター「ニュースの深層」で司会(火曜担当)も務める。著書に「官邸崩壊」や「ジャーナリズム崩壊」、「なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか」などがある。

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