2024年 4月 30日 (火)

2018年までに販売3倍増 VWの野心的目標は可能か

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   エコカー減税対象車を増やした効果で新車販売が大幅に伸びているフォルクスワーゲン(VW)。そのVW販売体制が大きな変革期を迎えている。独VWが2018年までの長期計画で設定した、18年の新車販売目標は11万台。この目標値は09年実績である38000台の2.9倍であり、2000年代前半までのスバル車の年間新車登録台数と同程度となる。日本のVW勢にとって10万台超えは未知の領域だ。

   トヨタ自動車のDUO事業撤退に伴うVW車の販売体制の再構築や、VW販売店が今後の車種や管理顧客の増加に対応しきれるかどうかなどの課題も浮上している。

正規販売チャンネルの「股さき」解消

   VWの日本法人フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)が本国から与えられた将来目標は、日本で外国メーカー車の新車販売シェア1位を守り続けることではなく、国産車を含めた新車登録市場で日本車の中堅メーカーと肩を並べることとされている。

   日本市場で輸入車は、登録車市場の5~8%程度しかなく、その小さな市場の中で他の外国メーカーと争っているだけでは、従来以上の販売台数とはならない。日本メーカーが海外で販売台数を伸ばしたように、VWは日本市場で日本車を相手に販売成長することを目指している。

   そのためにはVGJは、これからVWが日本に投入する車種を確実に売りさばける体制を構築し、8年後の年間11万台の販売達成に向けた準備を進める必要がある。だがそこにはトヨタという大きな障害があった。

   これまで日本でVW車の正規販売チャンネルは、VGJと契約したVW店によるVW販売網とトヨタと契約したDUO店によるDUO販売網の2つが存在してきた。DUO店はトヨタ車の販売会社がVW事業を行うために出店した店舗であり、VW正規販売店250店のうち過半数の134店を占めた。このためVGJが全国統一の販売促進キャンペーンを企画しても、DUO店の協力が得られずに足並みが揃わないこともあったという。

   ところが転機が訪れた。09年末にVWとスズキが提携を発表したこともあり、トヨタは10年末でVWとのディストリビューター契約を終了し、同時にDUO店は消滅することになった。トヨタ販社が11年以降もVW事業を継続するには、トヨタではなくVGJと契約を結んでDUO店をVW店に切り替える必要がある。

   8月にはDUO店を持つトヨタ販社88社のうち80社が、DUO店をVW店に移行させることを選択し、VGJと契約。この移行作業は9月から順次始まっている。一方、VW事業の継続をあきらめた8社が持つ販売責任地域やDUO店は、継続を選んだ近隣のトヨタ販社や既存のVW店が引き継ぐことになり、VW車を販売する250店舗体制は存続する見通しとなった。

   VGJにとっては、自分たちの言うことを聞く販売店が倍以上に増えることになったが、新たな問題が発生した。

日本市場だけにエコカー減税対象車を設ける

   トヨタ販社のVW事業は、トヨタの傘の下ということもあり、各社がトヨタ車の販売で培った独自の営業ノウハウをDUO店に持ち込んでいる。またVW車をトヨタ車から離れようとする顧客の受け皿と位置付けてVW事業の成長に力を入れないケースや、近隣のVW店との販売競合、経営規模が小規模なVW店に比べてトヨタ販社の人件費が高いことなどにより、利益を生み出せないDUO店もあった。

   このためトヨタもトヨタ販社に対してDUO店の運営コスト見直しを求め、独立採算制導入や別法人化を推奨。赤字が続くDUO店は閉鎖させるなど、販売網の再編を進めてVW事業の発展に取り組んでいた。

   このようななかでのトヨタのDUO事業終了は、トヨタ販社のなかで利益を出せないVW事業を淘汰することにもなり、VW車の販売力がある販社と店舗だけがVW店に移行する形となった。

   しかしVGJ側とトヨタ販社では、VWユーザーに対するアフターフォローや新車代替案内のタイミングをはじめとする販売手法、VW事業としての中古車販売に対する取り組み姿勢など、VW事業に対する基本的な考え方や運営手法で異なる部分がある。また店舗への部品供給の回数が1日2回から1回に減ることに伴う整備作業の流れの変更もある。

   VGJがVW店に導入させてきたVW事業の手法は、ドイツメーカーらしい枠が決まった流儀が基本。VWのCIで飾られた店舗の中にトヨタ流を持ち込んでいたDUO店は、VGJが求めるVW流のやり方に馴染めずに混乱するとの恐れも出ている。これまでVGJはDUO店の実力を把握していなかったこともあり、VW店へと移行するDUO店の実力測定に初めて取り組み始めた。

   人口問題や景気の先行きの不透明さなどから、将来的に新車市場の拡大は見込めない状況下、外国メーカー車の販売で「年間11万台は夢の話、複数のヒットが続けば最大6万台がいいところ」と笑う業界関係者は多い。だがVWは実現可能とみて販売実績が少ない日本市場に新商品を投入する計画を立てた。その一環として日本市場だけのためにゴルフ、ポロ、シロッコにエコカー減税対象車を設け、2011年にはミニバン、その先にはVW最小サイズのコンパクトカーなどの発売も予定している。

   年間11万台の新車販売計画が笑われるのは、市場のなかでVW車が輸入車の入門車とみなされ、日本車からVW車に乗り換えたユーザーがVW車に代替えするのではなく、他の外国メーカー車に乗り換えたり、日本車に戻ってしまう比率が高い状況が続いてきたことが最大の要因だ。

   これはDUO店、既存のVW店、VGJ、VWのすべてに問題がある。VWユーザーが販売・サービス対応の点でVW車に乗り続けることに満足できなかったことや、日本車に比べて販売車種構成が貧弱な点、ブランドイメージを向上させるための努力不足もある。今後、VWとVGJが11万台に向けてどのような成長戦略を示すかが注目される。だが当面の最大の課題は、既存のVW店とDUO店から移行の新VW店の顧客対応力を高め、両者の新たな協力・競争関係をどのように構築していくかにある。11年の新生VW販売網のスタートが、日本におけるVWの将来を占うことにも繋がっている。

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