2024年 5月 6日 (月)

LCCは地方にとって チャンスであり、ピンチ 
(連載「LCC革命の衝撃」第6回/観光庁長官・溝畑宏さんに聞く)

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口コミで外国人を呼び込む

――中国・韓国が伸びた要因は、何でしょうか。

溝畑 中国については、積極的なアピールを始めたこと、それと個人ビザを緩和したこと。「日本が、交流について積極的なシグナルを出している」というメッセージを送ることができたのではないでしょうか。国を挙げて取り組んでいることと、国だけではなく地方自治体や民間の人が、中国と交流したことが奏功しているのだと思います。実は、尖閣諸島の問題で、半減すると思っていたのですが、10月は前年同月比マイナス1.8%でした。変動を受けにくくなる程度に安定しているという印象を受けています。
   韓国も、09年は159万人にまで落ち込んだのですが、10年は約250万人のペースで推移しています。円高ウォン安でも日本にいらっしゃるのは、例えば福岡市と釜山市のように、自治体ごとの交流が、着実・計画的に進んでいる結果だと感じています。ただ、まだまだ「日本観光はコスト面で高い」という印象を持たれています。そういう中で、高速船ビートルの利用が伸びたり、LCCが参入したりするのは、需要創造につながっていくと考えています。一度行けば、必ずリピーターが出てきて、自分の予算を見ながら選択肢が広がります。そういうきっかけ作りというのは、LCCの役割として大きいと思います。

――LCCは、観光産業にどのようなインパクトを与えると考えていますか。グローバルな競争にさらされるという一面もあるように感じます。

溝畑 チャンスであるとともにピンチでもあるんです。今までは、観光産業は既得権益で守られていて、鎖国のような面もありました。ところが、一気に経済的に開国という状況になってきた。そこには競争も生まれるし、今までより地方がグローバルな視点を持っていかないといけません。地方がグローバルな視点を持って町づくり・経営をしていかないと、とてもじゃないけど3000万人は達成できません。大都市だけでは、絶対達成できません。観光立国に向けての10年のロードマップで大切なのは、地方の受け皿づくりの強化です。
   特にLCCというのは、地方にとってはチャンスです。コスト面で二の足を踏んでいた人が、これによって動き出す訳だし、羽田の国際化で、地方が海外とも繋がりやすくなるという面もあります。これをチャンスと感じて欲しいんです。攻める姿勢が大事です。
   東アジアに来る観光客の数は、推計で約2億人。これが10年後には約4億人になります。2億のうち、日本にたどり着くのが1000万人弱。これを、ふくらむ市場の中で2019年には2500万に持って行くことを目標に掲げていますので、LCCは地方都市にとってはチャンスになります。
   さらに、LCCでアウトバウンド(日本から海外への訪問)も増えると思います。旅先で交流を深め、逆に現地の人に日本に来てもらうことが大事です。このことが、間接効果としてインバウンドにも繋がります。

――LCCで海外に行きやすくなることによって、呼び込みにも繋がるということですね。

溝畑 「日本人っていいやっちゃなぁ。じゃぁ、一度行ってみようか」となってほしい、ということです。口コミですね。私も中国に行ったときに、現地で会った人に「何かあったら連絡してこい」と伝えていたのですが、それをきっかけに来日した人が、自分が長官に就任してからの10か月で100人ぐらいいます。「今度の休みに来い!」って言った、ほんまに来よって…。そういうもんですよ。現地に出向かなければ、この100人は来ない。やっぱり出ていかないといけない。ただ「来い来い」と言うよりは、出て行って仲良くなった方がいいと思いますね。

――LCCに対する支援策はありますか。

溝畑 既存のエアラインとLCCについて、特定の企業を応援することはありません。ただし、トータルで需要が高まるための支援、応援は、当然行わなければなりません。やっていかないと観光需要は伸びません。そこは表裏一体です。また、成田空港がLCCに対する参入促進策を打ち出したことは、利用者の立場になったきめ細かい航空市場が出来つつあると感じています、そういう意味では、有り難いと思います。

溝畑宏さん プロフィール

   みぞはた・ひろし 観光庁長官。1960年京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、1985年旧自治省(現・総務省)入省。北海道庁、大分県庁に出向し、大分県庁時代にサッカークラブ「大分トリニータ」の創設に携わり、04年から09年まで同チームの運営母体「株式会社大分フットボールクラブ」代表取締役。10年1月から現職。

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