2024年 5月 1日 (水)

金正哲「左耳ピアス」でテレビに 金総書記の誕生日直前、異例の豪遊

   韓国のKBSテレビは2011年2月15日、北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記の次男、正哲(ジョンチョル)氏がシンガポールで、英国ミュージシャンのエリック・クラプトン氏の公演や豪華なショッピングを楽しんでいたと伝えた。

   北朝鮮で「民族最大の祝日」とされる金総書記の誕生日(2月16日)の直前、めったに公の場に出ることのない正哲氏は、食糧難に苦しむ北朝鮮国内を尻目にシンガポールで豪遊していた。しかも「ギターの神様」クラプトン氏のTシャツを着たラフな姿で、左耳にはピアスをしていた。

後継者争いで敗れ、権力の中枢から外れた?

   韓国紙の朝鮮日報によれば、正哲氏は2月8日に同行者数十人を連れてシンガポールを訪問し、高級ホテルの1泊60万ウォン(約4万5000円)のスイートルームに15日まで滞在した。テーマパークやカジノなどの観光地を訪れ、高価なダイヤモンドなども購入していた。14日のクラプトン氏のコンサートは1人35万ウォン(約2万6000円)のVIP席で観覧し、Tシャツなどのグッズも大量に買い込んだという。

   北朝鮮ではいま、金総書記の誕生日前に恒例となっている特別配給も支給されなかったほどの食糧難が続いている。朝鮮日報は「国の住民の大多数が毎日の食事にも事欠く状況で、権力者の息子がロックコンサートに熱狂することなどあってはならない」と批判している。

   テレビ朝日の17日の番組内で、ジャーナリストの高世仁氏は「北朝鮮では西側の音楽を聴くこと自体がよろしくない。ましてやピアスをしたり、こうやって豪遊したりするのは考えられない」と、今回の豪遊がいかに異例かを指摘。後継者レースから脱落したとされる正哲氏の立場について、「映像を見る限り、権力の中枢から外れたと考えられる。長男の正男氏がときどきメディアで『私は自由なんだ』と言っているが、それに近い」と解説した。

熱狂的なクラプトンファン

   一方で、今回の外遊は特に問題がないとする意見もある。韓国氏の中央日報は17日、対北朝鮮情報関係者の声として、「(誕生日直前の)15日に平壌に戻ったとすれば、特に問題はなさそうだ」との見方を紹介している。

   フジテレビの16日の番組では、金総書記の元専属料理人の藤本健二氏が「海外で自由にできているということは、国内でもそれだけのポジション、正恩大将のサポートに向けたポストに就いていると思う」と語っている。

   正哲氏は以前からクラプトン氏の大ファンと伝えられている。フジテレビは06年6月、クラプトン氏の公演のためドイツに訪れた正哲氏をカメラで捉えており、正哲氏は公演のためにヨーロッパ中を回っていたとされている。

   内部告発サイト「ウィキリークス」が2010年12月11日に公開した米国外交公電では、北朝鮮の官僚がクラプトン氏の平壌公演を米政府が調整するよう希望していたことが明らかになっている。今回の正哲氏の「追っかけ」は、金総書記の誕生日前ということを差し置いてでも外せないイベントだったのかもしれない。

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