2024年 4月 30日 (火)

日本原電、ピンチ脱出できるか 自民の「方針転換」に期待

   敦賀原発(福井県敦賀市)2号機直下の「活断層」問題に揺れる日本原子力発電の経営の先行きに不透明感が高まってきた。2013年3月末に期限を迎える借入金について、一部金融機関が新たな運転資金を融通することに難色を示したことが明らかになったためだ。

   日本原電は当面不要になったウラン燃料を売却し、300億円程度の資金確保にめどをつけたほか、5%を出資する日本原燃(青森県六ヶ所村)株についても出資母体の大手電力9社に買い取ってもらう方向で協議を進めており、資金確保にしゃにむになっている。

敦賀2号機直下に「活断層」

   原子力専門の発電会社である日本原電ににわかに注目が集まったのは、国の原子力規制委員会が1月下旬、敦賀2号機直下の断層について「活断層の可能性が高い」との判断を示したことがきっかけだ。規制委は今年夏までにまとめる原発の新安全基準で、活断層の真上に原子炉を設置することを認めない方針を示している。仮に廃炉となれば1000億円以上といわれる多額の損失処理を迫られるだけに、同社は規制委の判断に猛烈な反論を繰り広げている。

   しかし、規制委の側は仮に日本原電から行政訴訟を起こされても、「十分に反論できる科学的な論拠を積み上げる」方針で、旗色は悪い。同社の敦賀1号機も運転開始から約43年経ち、想定耐用年数の40年を超過。東海第2原発(茨城県東海村)も地元村長などが廃炉を求めている。同社初の原発である東海原発はすでに運転を止めて廃炉に向けた作業が進んでおり、運転可能な3基がいずれも再稼働を全く見通せない事態に追い込まれているのだ。

   同社の主な収入源は、大手電力5社から得られる電気料金だ。電気料金には供給電力量に基づく従量料金と、供給量にかかわらず受け取れる基本料金収入があるため、電気を一切売っていない今でも基本料金で年間1000億円超の売上高がある。保有する原発3基がいずれも止まっているのに存続できるのはそのためだが、ここにきて「民間金融機関側が経営の先行きに不安を募らせている」(金融機関幹部)のだという。

電事連は万全の支援体制

   日本原電は東電や関電をはじめ大手電力9社の出資で設立された。このため、現在でも原電の借入金には大手電力会社が債務保証をしている。3月末に返済期限を迎える約1000億円の借入金も9社が債務保証して借り替え資金の融資を受けられる方向で、突然の黒字倒産という事態は避けられる見通しだ。仮に日本原電が経営破綻すれば、「今後の廃炉の担い手すら不在になる」(経済産業省幹部)だけに、電力会社の業界団体である電機事業連合会が万全の支援体制をとっている。

   ただし、大手電力による日本原電支援のコストは各社の電気料金に上乗せされている現実がある。専門家の間には「電力供給を受けていないのに計1000億円超の基本料金を払い続ければ、消費者の批判を招く」との声があるのも事実だ。

   いずれにせよ、ことは原発政策、エネルギー政策に直結する「国策会社」のことであり、「政府の方針がはっきりしない限り、日本原燃問題は論じられない」(経産省筋)のは当然のこと。

   将来の「原発ゼロ」を打ち出した民主党政権時には、日本原電を「原発ゼロに向けた原発国有化の受け皿に」との案もささやかれた。自民党政権が日本原電問題にどう対応するかは、前政権時からの原発政策の方向転換を占う試金石になる。

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