2024年 5月 1日 (水)

東電の経営再建に2つのハードル 「料金再値上げ」と「原発再稼動」

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   東京電力の経営再建計画「総合特別事業計画」の見直し論が動き始める。2012年5月に政府の認定を受けてから1年が過ぎたが、柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の再稼働の見通しが立たないなど、計画は実質破たん状態だ。安倍晋三首相が「国も一歩前に出たい」と語ったように、どこまで国が関与するかが大きなポイントになる。

柏崎刈羽は依然メドが立たない

   東電の2013年3月期決算(連結)は、最終損益が6852億円の赤字と、前期の7816億円に続き、2期連続の大赤字になった。原発の稼働停止に伴う火力発電用燃料が膨らんだのが主因だ。特別損失は3兆円近かった前期から半分以下に減ったものの、なお1兆2488億円を計上。多くが福島事故に伴う損害賠償費だ。

   この1年、計画に掲げた内容で実現したのは人件費削減や資産売却のリストラと、昨年9月からの家庭向け料金値上げぐらいで、全体として遅々として進んでいない。

   中でも、計画に盛り込んで全く実現のめどが立たないのが柏崎刈羽原発の再稼働。今年4月から順次運転を再開する予定だったが、原子力規制委員会の新安全基準策定の遅れなどもあって、全く見通しは立たない。再稼働を前提にした今期(2014年3月期)の黒字転換(経常黒字1000億円)は夢のまた夢で、4月末の決算発表で、今期業績見通しを「未定」とするしかなかった。

   柏崎刈羽原発は福島第1と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)で、再稼働のためには、蒸気に含まれた放射性物質を取り除くフィルター付きベントの設置が義務付けられるなど、審査のハードルは高い。泉田裕彦新潟県知事は、「福島第1原発事故の検証がされるまで再稼働の議論はしない」と一貫して主張、再稼働には極めて慎重姿勢で、知事の出身の経済産業省からも「泉田知事のうちは再稼働できない」(次官OB)と、諦めの声が出るほどだ。

政府と東電が水面下で火花を散らす

   計画が事実上破たんする中、東電経営への政府の関与をめぐり、政府と東電は水面下で火花を散らした。関係者によると、危機感を募らせたのは、下河辺和彦会長を含め、数土文夫JFEホールディングス相談役、小林喜光三菱ケミカルホールディングス社長らの社外取締役。

   原子力の「国策民営」という矛盾の中で、東電に福島事故の責任を一義的に負わせるのが今の仕組みだが、賠償や除染などの費用が想定の5兆円から倍増するのは必至とされるなか、「最後は国が全面的に責任を負うしかない」(経産省筋)。

   昨年11月には社外取締役が記者会見に顔をそろえ、賠償や除染、廃炉で国の追加支援を求めた。しかし、自民党の政権復帰後も政府の動きは鈍く、政府内から「現状のまま5年塩漬け」論まで出るに及び、業を煮やした東電の社外取締役の間では、取締役辞任との切羽詰まった意見も浮上していた。

参院選控えて議論は先送りか

   弁護士出身の下河辺氏は、財界で引き受け手がみつからず、1年の約束で会長を引き受けた経緯もあり、社外取締役の「集団辞任」も一時は取り沙汰された。そこで4月下旬に安倍晋三首相と下河辺会長らの会談をセットし、首相が「東電が直面する課題や福島の復興再生のために国も一歩前に出たい」との言質を与えて、下河辺氏らの留任でようやく収まったという。

   東電は今秋をメドに計画を改定したい考えだが、国の対応は「これから検討したい」(茂木敏充経産相)というように、全く未知数。金融機関の協力は当然として、代替火力の燃料費負担を穴埋めするため「再値上げの検討が避けられない」(東電の取引先銀行幹部)との見方が強い。

   さらに柏崎刈羽の再稼働と国の支援を組み合わせて盛り込むというのが、東電が描くシナリオ。それぞれの時期、規模などは別にして、「メニューとして、そうしたテーマが必要なのは官民を通した共通認識」(経産省筋)。だが、料金再値上げや税金の投入には国民の反発も根強く、参院選も控え、具体的な議論はまだ先になりそうだ。

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