2024年 4月 30日 (火)

「回復鮮明」か「足踏み状態」なのか 輸出の現状、大手新聞の見方も分かれる

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   貿易収支が分かれ道に立っているようだ。引き続き高水準の赤字が続く一方、アベノミクスの最初の効果である円安を背景に輸出額が増加を続けている。このまま輸出は順調に回復を続けるのか、失速するのか、海外の景気動向も含め注視する必要がありそうだ。

   財務省が2013年8月19日発表した7月の貿易統計(速報)は、円安を追い風に輸出額が前年同月比12.2%増の5兆9620億円と5カ月連続の増加を記録した。しかし、輸入が19.6%増の6兆9860億円と、7月として過去2番目の水準に膨らんだのが響き、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は1兆240億円の赤字と、半年ぶりに1兆円を上回った。7月としては過去最大で、赤字は13カ月連続だ。

輸入額を押し上げたのは原油とLNG

   輸入額を押し上げたのは原油(前年比30.2%増)と液化天然ガス(LNG、同16.9%増)。原発がほぼ全面的に止まり火力発電への依存が高まったところに猛暑が襲い、発電燃料の輸入が大きく増えたのが主因。株価の持ち直しに伴う個人消費の好調で欧州からの高級車の輸入などが伸びたのも特徴だ。

   一方の輸出額は、比較可能な1979年以降で7月としては過去5番目に多かった。国・地域別では自動車が好調な米国向けが同18.4%増の1兆1059億円と最も多く、欧州連合(EU)向けは16.6%増の5872億円。中国は9.5%増の1兆1045億円 だった。

輸出数量が1年2カ月ぶりに増加

   この数字をオーソドックスに評価すると、円安が前年より進んで輸出額が増えたが、火力発電向け燃料の輸入額が増加し、伸び率は輸入の方が高かったため、貿易赤字が膨らんだ、ということになる。

   ただ、今回は輸出数量が注目された。7月は1年2カ月ぶりに増加に転じ、前年比1.8%増えたからだ。地域別では米国向けが0.5%増、EU向けは1.9%増と低いながらも伸びた一方、中国を含むアジア向けは1.6%減 だった。また、円安の恩恵を受けやすい自動車に限ると、輸出台数は、米国向けが7.8%増と好調だったものの、中国向けは13.7%減、EUは19.1%減で、自動車全体では0.2%増の51万台余にとどまった。

   こうした数字は、今後の見通しも含めて、見方が分かれるところで、大手紙の見出しも、真っ二つに割れた。発表翌日の8月20日朝刊 の分析記事は、「輸出 足踏みの兆し」(日経)、「円安でも貿易赤字続く 勢い欠く輸出」(朝日)と悲観的な2紙に対し、読売は輸出数量増加を評価して「貿易赤字改善へ期待」と した。毎日は共同通信社電をそのまま使った模様だが、見出しは「輸出回復 鮮明に」と肯定的に評価した。

実質ベース 輸出の試算で7月は3.2%減

   詳しい分析の中では、読売が米国向け自動車輸出の好調ぶりなどを取り上げ、「円安がさらに進めば……輸出数量が徐々に増え、貿易収支が改善する『Jカーブ効果』も期待される」と解説。円安による輸入額の拡大は一時的で、半年程度の遅れで円安による輸出増の効果が上回って貿易収支が改善するとの見方を披露している。

   一方、日経は月々の連続的な傾向をみるのに適した季節調整値を使って、輸出額の季節調整値が前月比1.8%減と8カ月ぶりにマイナスになったことを取り上げて「輸出に新たなリスクが浮上している」と指摘。また、為替や商品相場の影響を覗いた実質ベースの輸出の試算(第一生命経済研究所)で、7月の輸出は3.2%減と2カ月ぶりに悪化しているとして、特にアジア向け実質輸出が5.7%落ち込んでいることなどから、「中国を中心とした景気減速で、 (輸出全体が)軟調に推移する可能性もある」とのシンクタンクの分析を紹介している。

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