2024年 4月 29日 (月)

領土問題PR動画、北方領土を外す 制作のメドすら立たない不思議

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   外務省が沖縄県の尖閣諸島や島根県の竹島が日本固有の領土であることを説明する動画をウェブサイトに公開し、中国と韓国が反発している。そんな中で置き去りにされているのが北方領土問題だ。

   北方領土の領有権をPRする手段については「何らかの形で考える」と心もとない上、閣僚の北方領土返還を求める発言にはロシア側が「ビザ無し交流」参加拒否をちらつかせるなど、日本側は終始押され気味だ。

報告書に「北方領土」の単語は1回も登場せず

   日本政府は2013年2月に領土問題への取り組みを強化するための「領土・主権対策企画調整室」が立ち上げているが、尖閣・竹島問題と、北方領土問題に対する取り組みとでは、かなり温度差がある。

   例えば、「企画調整室」の成果物でもある7月の「-戦略的発信の強化に向けて- 領土・主権をめぐる内外発信に関する有識者懇談会報告書」では、竹島と尖閣諸島の問題が中心で、「北方領土」の単語は1回も出てこない。

   担当大臣も積極姿勢とは距離があるようで、山本一太沖縄・北方相(領土問題相)は10月25日の会見で、尖閣・竹島の動画公開を受け北方領土に関する対応を聞かれたのに対して、

「北方領土については、今のところ、どういう予定になっているか分からないが、何らかの形で、動画なのか、フライヤーなのか、分からないが、やはり国内啓発、対外発信の方法を考えていくということになると思う」

と、大まかな方針を示すにとどまった。

PRキャラ「エリカちゃん」は領有権主張しない

   一応、山本氏はブログでも北方領土のPRについて言及している。例えば最近では、10月18日に事務方の働きぶりを称賛する中で、事務方に対して指示している内容を列挙。その中に、

「北方領土啓発キャンペーンのキャラクター、えりかちゃんの動画をもっと進化させて欲しい!」

とある。

   「エリカちゃん」は根室や北方四島海域に生息する海鳥「エトピリカ」にちなんだキャラクターで、啓発行事に着ぐるみが登場するほか、13年5月には「エリカちゃんの北方領土めぐり」、7月には「エリカちゃんの北方領土LOVEな一日」と題した3分程度のアニメ動画をユーチューブに公開している。だが、内容は北方領土の島々の概要を説明する程度にとどまっており、北方領土の領有権を主張する内容にはなっていない。

ロシア、ビザなし交流参加拒否ちらつかせる

   北方領土問題では、ロシア側の強硬姿勢が目立つ。そのひとつが、ビザなし訪問をめぐるやり取りだ。山本氏はビザなし交流の一環として北方領土を訪問した直後の9月23日に

「領土返還を実現させていかなければいけないという決意を新たにした」

と述べた。これに対して、ロシア外務省は9月26日に異例の声明を発表。声明では、ビザなし交流は旧島民の祖先の墓参を目的とした「人道的措置」だと説明し、山本氏の発言については、

「こうした訪問で平和条約締結のような敏感な問題で政治的発言をするのは不適切」

と批判。脅しのような文言まで突きつけた。

「もし何らかの理由で日本の政治家がロシア領訪問後に『島の問題』について公的発言を控えることができないのならば、我々は、政治家のこのような旅への参加を制限する権利を留保する」

この声明に対して、山本氏は10月1日の会見で、

「これまでの日本政府の立場を改めて申し上げたということで、これについて特に抗議をされるような中身ではないと考えている」

と応じたもの、明示的な反論はしなかった。

   このような状態で、北方領土の動画が尖閣・竹島と同時公開されなかったことには批判もでている。例えば作家で元外交官の佐藤優氏は、ウェブコラム「眼光紙背」で、「ロシアに対して誤ったシグナルを送ることになる」と指摘している。

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