2024年 5月 1日 (水)

サムスン営業利益37%減の衝撃 新型スマホと「独自OS」で突破口見いだせるか

   韓国サムスン電子の2014年10~12月期連結決算で、営業利益が前年同期比37.4%減に落ち込む見通しとなった。

   主軸のスマートフォン(スマホ)事業が中国の新興メーカーに押され、苦戦続き。巻き返しにはスマホの復活、さらには新開発の基本ソフト(OS)の動向が左右しそうだ。

モバイル部門の利益低下、スマホ世界シェアも落とす

「ギャラクシー」は巻き返しなるか(写真は「S5」)
「ギャラクシー」は巻き返しなるか(写真は「S5」)

   2015年1月8日に発表された速報値によると、営業利益は5兆2000億ウォン(約5620億円)。複数の報道によるとアナリストの予想を上回り、前期(7~9月期)比では改善したという。ただし前期の決算は「サムスンショック」と呼ばれるほど悪化したことを考えると、素直には喜べない数字だろう。

   通年でも9年ぶりの減収、そして2011年以来の3年ぶりの減益が見込まれる。2011年は、事業の柱だった半導体と液晶パネルの価格下落が響いた半面スマホが好調で、売上高では当時の過去最高となった。一部事業が不振でも、別のビジネスがカバーできていた。その後は、「ギャラクシー」ブランドが成長してモバイル分野が事業全体をけん引し、2013年は売上高、営業利益ともに過去最高を記録した。

   そこから1年で「暗転」した背景には、スマホの不調がある。1月8日付のロイター通信は、2013年に全体の利益の約68%を稼いでいたモバイル部門が、2014年7~9月期には約44%に低下したと伝えた。同四半期のスマホの世界出荷台数を見ると、サムスンが大きくシェアを落としていることが分かる。米調査会社IDCの2014年10月29日付発表資料によると、サムスンは首位を守ったもののシェアは前年同期の32.5%から23.8%と縮小、出荷台数もトップ5メーカーの中で唯一マイナス成長だった。

   代わって台頭してきたのが、小米(シャオミ)や華為技術(ファーウェイ)、聯想集団(レノボ)といったいわゆる「中華スマホ」勢。特に小米は2014年に快進撃を続け、売上高は前年比135%増、携帯電話販売台数は6100万台を超えた。低価格ながら機能やデザイン面で大手メーカーに引けを取らない端末が、おひざ元の中国で人気を呼んだ。割を食ったのがサムスンで、中国市場でのシェア首位を奪われてしまった。「お得意さま」だった中国で、地元発の強力なライバルが登場してきたのは頭の痛いところだろう。

新OS「タイゼン」搭載テレビ発売を計画

   3年前の営業利益減の際は、業績面で不振だった液晶を成長株のスマホが補った。だが今回は状況が異なり、「スマホ頼み」が続きそうだ。

   2014年4月に発売された「ギャラクシーS5」は、販売の伸び悩みが懸念された。10月には、スマホ本体の右側面にディスプレーが湾曲する形で伸びた「ギャラクシーノート・エッジ」を発売。「S5」の後継機種となる「S6」も2015年の早い段階で発売とのうわさが出ており、1月6日から米ラスベガスで開かれているデジタル製品の見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(CES)でのお披露目が期待されている。まずは主軸のビジネスで攻勢をかけたいところだろう。

   もうひとつ、サムスンが2015年の目玉に据えたいのが、同社が中心となって開発したOS「タイゼン」だ。米ウォールストリートジャーナル(WSJ)日本語電子版は1月6日、サムスンの尹富根社長兼最高経営責任者がCESの前のインタビューで、タイゼンを搭載したテレビを2015年2月に発売する計画を明らかにしたと伝えた。ウェアラブル端末だけでなく、他の分野にも拡大させたいという。

   スマホやタブレット型端末のOSでは現在、米グーグルが開発した「アンドロイド」と、米アップルの「アイフォーン(iPhone)」や「iPad」に搭載されている「iOS」の2強状態。アンドロイドは、インターネット機能を備えた「スマートテレビ」に採用するメーカーもある。ふたつのOSは強力な壁だが、サムスンはタイゼンを積んだ各種端末で勝負を挑もうというわけだ。ただしWSJの記事では、アプリ開発企業のタイゼンに対する関心は低いと厳しい見方を示しており、現時点でどこまで伸びるかは未知数だ。

   長年サムスンを率いてきたカリスマ経営者、李健熙会長が病に伏せており、後継者と目される息子の李在鎔副会長の動きにも注目が集まる。韓国の主要紙・中央日報日本語電子版は1月8日付記事で、李在鎔氏がCESへの出席を見送り、サムスングループ各社の代表と会って事業計画にかかわっていると報じた。反転攻勢への足場固めとも予想される。

   ただ、周りでは「中華スマホ」をはじめ強力なライバル企業が牙をむく。通貨ウォン高や、大韓航空のいわゆる「ナッツリターン事件」以降の財閥企業に対する韓国社会の厳しい目といった「不安要素」もあり、油断できない状況が続く。

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